「赤ちゃんポスト」として有名になった「こうのとりのゆりかご」。
2007年に開設され、十年が経過した。
当初考えられていたよりも多い赤ちゃんが、そして一定程度大きくなった子供達が棄てられた。
十年を過ぎた今、この存在を通して、様々な問題を考える。
本書中で記憶に残るのは、ある少年の語った話だ。
その少年は自分が「赤ちゃんポスト」に預けられたその時を覚えているのだと言う。
彼が預けられるまで、母親には様々な葛藤があっただろう。
一概に、ひどい母親だと責めることはできない。
ただ、どうして、と言う気持ちはなくなることはないだろう。
子供を産めない、産みたくない、頼れない、知られたくない......。
世間体を気にして預けた母親(または父親等も)がいたことは事実としてあるようだ。
それは本当に身勝手な行為であるが、それでも、望みを託して、赤ちゃんポストに預けたのだと私は思いたい。
ここなら、この子を助けてくれる、そう信じて、親であろうとしたのだと。
亡くなった赤ちゃんを預け入れた母親も、「ここでなら供養してもらえると思った」と供述しているようだ。
無知だ、無責任だ、自己中心的だ、罪を軽くするための嘘だ、確かにそうかもしれない。
けれども、どうしてそれを決めつけてしまえるだろう。
ましてや虐待だと断罪することなど。
願わくば、もっとたくさんの場所に設置してほしい。
そして、その先の、子供達に寄り添える環境づくりも。
産んだ母親ばかりに責任と負担がかかりすぎる現状は異常だ。
母を責めるならどうして父の責任を誰も問わないのだ。
「こうのとりのゆりかご」は、母と子の悲しみの涙ではなく、祈りと希望で包まれなければならない。
- 感想投稿日 : 2018年7月31日
- 読了日 : 2018年6月26日
- 本棚登録日 : 2018年7月31日
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