ひとりぼっちが怖かった きょうも傍聴席にいます

  • 幻冬舎 (2021年2月25日発売)
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感想 : 14
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実際にあった事件の裁判傍聴記録。
このシリーズは読むたびいつも胸が痛み、頭の中がさまざまな感想で埋め尽くされる。

あの事件、事故だ、と思うもの、記憶にないなと思うもの。
私のような「他人」には「ああこんな事件もあったっけ」であっても当事者にとっては一生忘れられない苦しみ。
それを消費していいのだろうか、いや、公開の裁判であるのだからそれを知った上で何かをすればいい。
いや、でも何をすれば。

子供を3回落として殺した母の事件は読んでいて辛かった。
産後うつは人ごとではない。
この母親は自分で病院に行ったり、夫に助けを求めたり、周囲に何度もヘルプを出していたのに。
子供の鳴き声が自分を責めているように聞こえる、ただ泣き止んでほしい、もうそれ以外考えられない気持ちはよくわかる。
この母親は、私だったかもしれない。

介護殺人や老親、配偶者の死体遺棄もまた辛い。
人は眠れなくなったり、一人で頑張り続けたりすると、ある日突然、頭の回路がプツッときれる。

本書を読んで、ああすればよかったこうすればよかった、意味わからない、なんで、というのは簡単だ。
根本的な問題として、誰かの適切な助けがあれば、というのは共通項と思う。
誰かの助けを得ることは恥ではないし、当たり前のこと。
周囲も甘くみず、かといって騒ぎ立てず、寄り添いつつ淡々と手助けをすればいくつかは防げたかもしれない。

だが助けとはなんだろう。
相手が固辞しているところに無理矢理にでも介入することが本当にいいのか?
ことが判明すれば、無理矢理にでもやればよかった、となるが、そうでなければ別の問題を引き起こす。

だから共通認識として持つべきは、助けを求めることは恥ではない、ということだ。
助けは片方だけが手を伸ばすだけでは成立しない。
自助共助公助、そしてそれを実現するための教育。

誰かを傷つけてしまう前に、誰かを叩くより先に。
行うべきこと、できることは、最もそばにあって、最も小さきところにある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2022年11月15日
読了日 : 2022年11月15日
本棚登録日 : 2022年11月15日

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