本バスめぐりん。

著者 :
  • 東京創元社 (2016年11月30日発売)
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本棚登録 : 1145
感想 : 180
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「めぐりん」という言葉に親しみを覚え、地元図書館の特集コーナーにてつい手にとった本書。
このめぐりんは、移動図書館。
約3000冊の本を載せ、種川市内をめぐっている。
場所や時間などに応じ、少しずつ違う本を積み、定年後の再就職運転士、久志と司書の菜緖子の2人でぐるりと市内をめぐる。

物語自体は日常の謎。
本の話と謎解き。
うーん、我が図書館、やってくれるじゃないの。

物語は5篇。
好きな物語は、「気立てが良くて賢くて」。
訪問先を減らすため、その検討にあがる住宅街は、多分に漏れず、高齢化が進んでいる。
造成当時は、声の大きい人もいて、安住の地を奪われまいと必死だった。
近くにできるはずの保育園も迷惑施設として猛反対。
せめてめぐりんを使わせて、と保育園から頼まれても梨の礫。
子供たちの野外活動も規制、規制。
それなのに、どのツラ下げて、めぐりんが来てくれなくなってしまうから、めぐりんを使ってくれませんか、なんて言えるだろうか…。
さて、めぐりんはこの住宅街をこれからも回るのか。
保育園児は来てくれるのか。

心に残る言葉は、「今までを変えるのは、今までにない人材」91頁。
優しく、温かい物語の数々に心が暖かくなる。
冬の、ひだまりのように。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2022年1月17日
読了日 : 2021年12月4日
本棚登録日 : 2022年1月17日

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