がん消滅の罠 完全寛解の謎 (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社 (2018年1月11日発売)
3.37
  • (59)
  • (173)
  • (238)
  • (60)
  • (14)
本棚登録 : 2051
感想 : 189
3

『このミステリーがすごい!』大賞、第15回大賞受賞作。
ガンが何故消えたのか、という今までにない角度の謎解きだ。

がんの最新研究についての記述は興味深い。
NHKスペシャル「人体」でも扱われていた、免疫系の力と、それを突破するがん細胞の巧妙さには驚かされたものだが、まさかここでそれを再度目にするとは!
124〜125頁を参照されたい。

さて、私個人が感じるに、各登場人物たちは際立って魅力的とはいえない。
特に主人公、夏目の花というか、オーラというか、そういったものが弱い。
あえていうなら宇垣医師とその患者柳沢は好きだが、とにかく主人公の影が薄すぎる。
「いい人」とは往々にしてそんなものかもしれないが。

物語は真犯人を追い詰めて、そして、死で終わる。
ネタバレするな!だって?
バラすわけがない。
そこで終わるんだったら、きっと「このミス」大賞ではなかっただろう。
結末はそんなわけで、一回で理解できなくて、少し前に戻ってもう一度読み直した。
とても、不気味な結末だった。
自分たちが目指す社会の実現、それはとても美しい言葉だし、理想を描く素晴らしさを説くが、一方で美辞麗句の後ろに隠された「正義」の危うさを考えさせられたのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2018年12月16日
読了日 : 2018年11月17日
本棚登録日 : 2018年12月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする