女ともだち

著者 :
  • 小学館 (2010年3月1日発売)
3.10
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本棚登録 : 439
感想 : 87
3

5人の作家さんによる女ともだちにまつわるオムニバス小説。
「女ともだち」というキーワード以外に、「派遣社員」もキーワード?というくらい、5つの作品全て、派遣社員の女性が主人公。雇用面で男女平等がかなり進んだ現在だが、確かにうちの会社も、事務職、派遣、請負は(おそらく)全員女性だし、やはり社会人で「女ともだち」となると、派遣社員というイメージにつながるのかもしれない。
余談はこの辺にして、下記簡単なあらすじと感想レビュー。
※ネタバレ注意

『海まであとどのくらい?』角田光代
自然化粧品の会社の営業部で派遣社員として働いていた5人の女性達が、5年ぶりの再会を果たし、当時の楽しかった日々を振り返る。
社内不倫からの駆け落ち作戦とは、だいぶお気楽な方々。そりゃ同僚とはいえ、他人事だし、楽しかったに違いないわ~(笑)

『野江さんと蒟蒻』井上荒野
子供が出来た為、もうすぐ結婚する夏彦は、蒟蒻の炒め煮を作るのが上手な派遣社員の野江さんのことがついつい気になってしまう…。野江さんが蒟蒻をたたきまくる場面、なぜだか読んでいてスカッとした。

『その角を左に曲がって』栗田有起
派遣社員である私は、いつも体のどこかを怪我している正社員のひとみさんと、会社の化粧室で偶然鉢合わせた。会社の最上階で働くひとみさんと、最下層のフロアで働く私。二人は共に食事をする仲となり、ある日ひとみさんが腹痛で倒れた際に、実は妊娠できない身体であるということを打ち明けられる。
本作の中で特に気に入った二作品の一つ目。多分、ひとみさんが正社員で、仕事一筋で頑張ってきた人だから(笑)

『握られたくて』唯野未歩子
夏に30歳になる派遣社員のこぶちゃんは寿退社することが目標。小学生時代の幼馴染であるやぎちゃんの旦那の友達の紹介を受け、初対面の成田くんを合わせた4人で魚釣りに行く。しかし、海鮮が苦手なこぶちゃんは、釣った穴子を食べるという苦痛に耐えかね、やぎちゃんとともに無断で脱走する。
本作の中で特に気に入った二作品の二つ目。
"誰かと出逢い、託し、委ね、すべてを握られ、尽くしていく、あらたな人生。わたしにも実践できるような気がしたし、成田くんはいいひとだったと思うけれど。でも、彼のために、わたしは自分を変えることはできず、彼では、わたしを変えることができなかった。"
この場面が好き。こぶちゃんが無理して自分を曲げなくてよかった。
既婚者のやぎちゃんにはやぎちゃんの、独身の私(こぶちゃん)には私の悩みがある。置かれている状況がちがうから、きっと分かり合えないだろう、と私は思い込み、自分の悩みは胸に秘めていたけれど、やぎちゃんはいつも素直に打ち明けてくれる。幼馴染同士の互いを思い遣るやさしい関係性がユーモアも交えて描かれた温かい作品。

『エイコちゃんのしっぽ』川上弘美
同じ派遣会社に登録している私とエイコちゃん。価値観が違っても気が合う二人の微笑ましいやり取りに癒される。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: オムニバス
感想投稿日 : 2024年1月6日
読了日 : 2024年1月2日
本棚登録日 : 2024年1月2日

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