ガイドツアー 複雑系の世界: サンタフェ研究所講義ノートから

  • 紀伊國屋書店 (2011年11月25日発売)
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感想 : 28

計算機科学を基盤に,いわゆるカオスを研究している著者による,カオスに関連したトピックを網羅的に扱った一般向け講義を基にした内容.著者の専門ということもあり,様々なトピックの中では,生物学に関連したものが多め.一般向けということもあって,カオスそのものの事例だけでなく,背景にある物理学・生物学についても丁寧に説明されていて読みやすく,勉強にもなった.前半は20世紀の物理学・数学における発見により,従前の予測可能性や理論の完全性に対する期待が破られた,という文脈の中に,カオスを置いている.シンプルなモデルから,ランダムに見える結果が生じ,更にそれにも実は当初のモデルからは想像できなかった規則性が見いだせるというのが,カオスの骨格.遺伝的アルゴリズムの例にあった掃除ロボットのプログラムが面白かった.また,Wolframが考察した,1次元のセル・オートマトンの話は全く知らず,非常に興味深かった.生物の代謝などを規定する4分の1乗則が,血管のフラクタル構造の次元に起因しているという説も.あと,著者がHofstadterに師事するきっかけになったエピソードが,個人的には良かった.私は地球科学の専攻で,この手のトピックが直接関わる話は今のところ気象くらいしか出てきていないようだが,どちらかというと数値シミュレーションやそれに基づく予測のような分野で,この分野の知見が生きる可能性はあると思った.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫・新書・単行本 - 自然科学
感想投稿日 : 2019年2月22日
読了日 : 2019年2月22日
本棚登録日 : 2015年12月27日

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