なぜ「耐震偽装問題」は起きるのか (講談社+α新書 254-2D)

著者 :
  • 講談社 (2005年12月27日発売)
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本書は「耐震偽造問題」をタイトルにしているが、それについて詳しく書かれているのは前半であり、後半からは中古マンションの勝ち組と負け組の二極化、そして勝ち組が持つ管理力に焦点を当てている。

耐震偽造問題については、マンションを設計する際に関与する(まぁマンションだけではないと思いますが)意匠設計者、構造設計者、設備設計者とお金の流れ、さらに3人の設計者のうち構造設計者が評価されにくい構造を問題としている。お金の流れとは、
購入者→売主(ディベロッパー)→施行会社→下請け…
となっており、耐震構造や強度などがしっかしているかチェックする構造設計者は、マンションのデザインを考える意匠設計者から仕事をもらう形になっている。そのため、意匠設計者の構造に対する配慮があまりなされていないデザインでも、構造設計者は容認してしまのだという。またこれはどの設計会社なら大丈夫というわけではなく、設計者や管理者一人ひとりの問題となる。
そのため、筆者は「誰が建てたのか」「誰が監督したのか」「誰が設計したのか」を公表し、マンション居住者・居住希望者に選んでもらい、適当な仕事しかしない設計者や監督者は淘汰されていくようにすべきだと述べている。
また、建築や不動産に関する資格も常にブラッシュアップさせることで、良い設計者・監督者を評価・選択できる仕組みが必要だと述べている。

後半は中古マンション市場の未整備さと、勝ち組マンション形成のために必要なことが書かれている。中古マンション市場の未整備さはここに書かれていること以外にもいろいろあると思うが、ここではその評価の不十分さを挙げている。マンションの価値判断指標は「まわりがどれくらいで売れているか」だけあり、そのため実際の資産価値に見合わないマンションも多くある。逆に言えば「耐久性・可変性・メンテナンス性が高く」資産価値が高いのに格安なお宝マンションも眠っているという。

そしてそれら資産価値を高めるものとして、マンションの管理力を筆者は強調する。管理力とは①住人のマンション管理に対する意識が高い、②適切な管理会社と付き合っている、③予防的で適切な管理・修繕が行われている、④管理費・修繕積立金の額が適切であることだという。
そして(財)マンション管理センターでは、この管理力を価値評価指標として使うための情報サービス「マンションみらいネット」を稼働させている。

京都でもマンション管理評価機構がマンションみらいネットと同じように、中古マンション購入の際に管理の度合いを考慮してもらうための情報収集がされているよね。ただ不動産屋さんがどれくらいこれらの情報を持ち、積極的に購入者に開示しているかはわからないが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 建築・不動産
感想投稿日 : 2010年11月13日
読了日 : 2010年11月6日
本棚登録日 : 2010年11月6日

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