寺山修司詩集 (ハルキ文庫 て 1-12)

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  • 角川春樹事務所 (2003年11月1日発売)
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日本経済新聞社小中大
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こころの玉手箱漫画家 弘兼憲史(4) 寺山修司編「男の詩集」

2018/4/12付日本経済新聞 夕刊
 高水高校付属中学で入部したのが体操部。しかし、自分の才能を生かす場はここでないと感じ、まもなくやめてしまう。続いて軟式テニス部に入るが、とにかく練習がめんどくさい。半年後に退部した。

気持ちにピタッとくる言葉に出合うたび何度も口ずさんだ
気持ちにピタッとくる言葉に出合うたび何度も口ずさんだ
 最終的にはクラスで作った文集がきっかけとなり、文芸部を創部した。夏目漱石、森鴎外、三島由紀夫、大江健三郎らの作品を読んだ。トルストイらロシア文学にも挑んだが、こちらは登場人物の名前が覚えられず、苦戦した記憶がある。高校に進んでからは、北原白秋、萩原朔太郎、ボードレールらのまねっこをして詩も書いた。

 早稲田大学では漫画研究会に所属する一方で、小説も執筆した。ある文学賞に公募したところ、最終候補4編に残った。前祝いをしようという友人たちの誘いに乗って、賞金2万円を当てにした飲み会を開いたところ、結果は受賞ならず。学生にとっては痛い出費となった。

 そのころ読んだのが「男の詩集」。詩、短歌、演劇など幅広いジャンルで活躍した寺山修司が、ドイツの詩人で作家のエーリッヒ・ケストナーの「人生処方詩集」にならって、様々な詩を集めたものだ。

 例えば「故郷を思い出したかったら」という章には「ふるさとは遠きにありて思ふもの」で始まる室生犀星の詩、石川啄木の短歌「ふるさとの訛(なまり)なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」、井沢八郎が歌った「あゝ上野駅」(作詞は関口義明)の歌詞などを収める。自分の気持ちにピタッとくる言葉に出合うたび、何度も口ずさんだものだ。

 そうした名作とは比べられないが、僕も自分の漫画には、はっとするような言葉を盛り込みたいと考えている。中高年の恋愛を描く短編「黄昏(たそがれ)流星群」を「ビッグコミックオリジナル誌」に現在連載中だが、ストーリー作りに悩むことはあまりない。でも状況を説明するナレーションや心情を示すモノローグの部分は、どういう言葉を使うかで結構考える。

 そこで役立つのが、これまで読んできた詩や小説。常に引き出しの数を増やすように心がけている。

読書状況:読みたい 公開設定:公開
カテゴリ: 生き方
感想投稿日 : 2018年4月15日
本棚登録日 : 2018年4月15日

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