なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか――見捨てられた原発直下「双葉病院」恐怖の7日間

著者 :
  • 講談社 (2012年3月13日発売)
3.74
  • (6)
  • (17)
  • (14)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 121
感想 : 22
3

福島第一原発事故の後、福島県本庁に設置された災害対策本部から発表されたプレスリリース。
<県立いわき光洋高等学校(双葉病院)について 3月17日>
3月14日から16日にかけての病院からの患者の救出状況として、
○施設には、結果的に自力で歩くことができない、重篤な患者だけが残された。
○ただちに病院・施設に自衛隊が救出に向かった。
○双葉病院には、病院関係者は一人も残っていなかったため、患者の状態等は一切わからないままの救出となった。

この発表を受けて、双葉病院グループによる「患者置き去り事件」として大きな問題となる。
はたして、医療関係者が患者を置き去りになどするものだろうか?
そんな疑問から続けた取材からは、報道とは全く違う事実がわかり始める。

問題の根本はどこにあるのだろうか?
このような大きな災害・事故の対応は、一自治体では賄いきれるものではない。町・県が対策を考えるのではなく、国が自衛隊など大きな組織を効率的に使って行うべきもの。
また、原発の安全神話から、このような事故を想定していなかった。
かろうじて自衛隊が原発事故を想定した訓練は行っていたが、その自衛隊に指示を出す災害対策本部が全く機能していなかった。

この双葉病院の一件は、震災による犠牲と片づけてはいけない。原発事故や、その後のお粗末な対応による人災である。双葉病院長は「犯人」ではなく、間違いなく被害者の一人だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2019年2月19日
読了日 : 2012年10月4日
本棚登録日 : 2019年2月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする