最期の1ページまで、貪るように読みました。
本当におもしろかった。
今の日本について、常々不思議に思っていたことの答え、というか、なぜそうなのか原因みたいなものがいくつか書かれてあって、「なるほど、そういうことか」と思った。
たとえば、多くの日本人の中に強くある、戦争の被害者意識。
大人から子供まで、どうしてこんなにも「被害者」としての意識が強いんだろう、と常々疑問だった。海外が日本を見る目と真逆なだけに。
私は、小林よしのりはじめ、「脱自虐」を唱える人たちのキャンペーンの結果かしらなどと思っていたけれど、さかのぼると、GHQと日本の関係、東京裁判のダブルスタンダード、そういったものの結果なのだと分かった。
とても興味深い。
また、最近ネット上でかなり目に余ると感じる歴史修正主義者たちの主張(たとえば、南京大虐殺はでっちあげである、等)や、ネトウヨたちの主張(日本はアジアを帝国主義から救おうとした、等)の根拠も、この本を読んで、初めて理解した。もちろん今もまったく賛成はできないけれど、根拠と論旨は分かった。
今までは全く理解不能だったのだけれど。
自民党とアメリカ、自民党と産業界の結びつきもしかり。
まあとにかくいろいろと腑に落ちました。
しかし一番驚いたのは、なんといっても、やっぱり、憲法9条は、天皇を守るために作られた、という部分。
衝撃でした。
憲法については、マッカーサーの性格とリーダーシップ、担当者たちの理想への思いが素敵な形で結実したわけだけれど、それ以外については、裕仁が退位しなかったことは多くの面でマイナスに働いているように見えた。いろいろと考えさせられた。
特に、戦後GHQが行なった検閲は、たまに言及されることがあっても、戦前の検閲ほどのものではないだろうと思って今まで気にしたことがなかったけれども、こうして検証してみると、それによる不利益はかなり大きかったようで、驚いた。
そして、東京裁判の被告たちが、文字通り「天皇を守る楯となって死んでいった」ところ・・・・
英語圏の人の著書らしく、皮肉たっぷりに描かれているこの部分は、右翼じゃなくてもスッキリしないものを感じる(もちろん右翼の方々の思いとは違う意味で)。
「共同謀議」が行なわれたとされる全期間を通して権力の中心にいたのは、じつは、天皇裕仁だけだったというのに、天皇に責任が及ぶような証言は控えるよう被告たちに裏工作されていたとは!
また、この裁判に関係した判事はじめ多くの人の裁判に対する疑義は、ここ数年、まさに世界で沸騰しつつある人種問題や政治の問題が含まれている。
帝国のダブルスタンダードは今もまだまだ健在だよなぁ、とため息まじりに思う。
マッカーサーの人気が最後に急激にしぼんでいった様子は、申し訳ないけど、笑ってしまった!
愛されていると思ってたのに、チョロイから便利に使われていただけか!と分かってショックを受けるという、大失恋の物語。
日本とアメリカの関係の縮図(今も続く)ですね。
- 感想投稿日 : 2021年5月27日
- 読了日 : 2021年5月15日
- 本棚登録日 : 2021年5月3日
みんなの感想をみる