村上春樹と私

  • 東洋経済新報社 (2016年11月11日発売)
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感想 : 9
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永年の大いなる疑問がある。
もし私の母国語が英語だったとして、やっぱり今と同じように村上春樹が好きだったろうか?

というのも、私は、村上春樹さんの書く日本語が本当に本当に好きだけど、物語の内容、つまり、ストーリーラインとかキャラクターとか結末とかは全然好きじゃないことの方が多いから。
だから、違う言語になったら(=大好きな要素が取り除かれたら)好きじゃないかもしれない、という疑念がどうしてもぬぐえない。あるいは、「外国の人は村上春樹の何がいいと思っているんだろう?」とか。

そういったことを考えていると「そもそもほんとに外国で受けてるのかしら・・・一部のマニア受けを日本人が大げさに言ってるだけじゃないのかしら」と疑い始めていたけど、この本を読んだら、実際に世界中の多くの人に愛されている証拠がいっぱい書かれていて、ビックリした。
す、すいません。疑ったりして。
でも、やっぱり、彼の何が受けているのかは、最後までよく分からなかったけど・・・。

だけど、ジェイ・ルービンさんが、日本という国の文化と文学を本当に本当に、私などが足元にも及ばないくらい深く深く愛しておられるのは非常によく分かった。
なんだか、その愛がまぶしくてクラクラした。
日本人なのにロクに日本語の文学を読んでなくて、その真価も全くと言っていいほど理解してなくて、ほんとすいません・・・と言いたくなった。

タイトルは「村上春樹と私」だけれど、前半よりも後半の、村上春樹さんとは関係のない話の方がおもしろかった。
特に、翻訳の苦労の話(日本語は数をあんまり気にしないところ)と、検閲の話(同じ検閲でも、戦前と戦後では微妙に意味合いが違うところとか)。
海外の編集者が世界の文学のトレンドにものすごく敏感なのにも驚いたし、編集者からルービンさんに本の企画の相談がくるところは、内容が素敵でわくわくした。もう出版されているんだけど。
ほかにも、「MONKEY BUSINESS」がしぶとく生き残ることになった裏事情にもビックリした。すごく興味深かった。海外で継続されただなんて、驚きしかない。しかも私には思いもよらない理由で。なんだか隔世の感。

息子さんの仕事についての話は明らかに蛇足で宣伝しすぎなような気がしたけど・・・父親として自慢でもあり、心配の種でもあるのかな。
「日々の光」は、もともと興味あるテーマなので、ぜひ読んでみたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2019年6月17日
読了日 : 2019年6月17日
本棚登録日 : 2019年6月17日

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