NHKテレビ「視点・論点」で1995年から17年にわたって語った48回の元原稿を初めてまとめた全篇に別の3篇を加えたものだそうです。
「なつかしい時間」とは日々に親しい時間、日常というものを成り立たせ、ささえる時間のことであり、誰にも見えているが、誰も見ていない、感受性の問題をめぐるものであるそうです。
他には、ことば・時間・風景・本・対話・自作の詩などを中心に語られています。
1995年に放送された第1回目の「国境を越える言葉」では、「言葉以上におたがいを非常に親しくさせるものはありません。にもかかわらず、その言葉を共有しないとき、あるいはできないとき、言葉くらい人をはじくものもありません。国境を越える言葉というものは、ないものについて言うことのできる言葉ではないだろうかと思うのです。自由。友情。敵意。憎悪。そういった言葉は誰も見たことがないけれども、そう感じ、そう考え、そう名づけて、そう呼んできた、そういう言葉です。国境を越えそれぞれの違いを越えるのは、言葉でなくて、言葉が表す概念です。おたがいを繋ぐべき大切な概念を共有することが、じつは言葉を異にするおたがいの共生を可能にしてゆくのだ、というふうに思うのです」
という話を宮沢賢治とペルーのセーサル・バジュッホという二人の詩人が共有していた、死者への深い祈りと沈黙とを例にあげて語られています。
人間にとって大切なことを忘れそうになったとき、繰り返して読みたい一冊であると思いました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
長田弘 岩波新書
- 感想投稿日 : 2019年2月23日
- 読了日 : 2019年2月23日
- 本棚登録日 : 2019年2月23日
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