この小説の前半を読んで「これは婚活バイブルだ」と思いました。
主人公の男性の39歳でイケメンの架が50人だとか、100人だとかと会って婚活したというのは、それはさぞかし疲れるでしょうと思いました。
「在庫処分セール」とか酷い言葉もあるものだと思いました。
架の相手となる真実の姉、希実が「お見合いがうまくいってないって聞いて思ったよ。真実も母もどうしてそんなに傲慢なんだろうって」と言いますが、前半の真実はとても善良な女性らしく描かれていました。
だけど、後半、変わるのですね。
真実の素顔が。
善良から傲慢に。
架の女友達の美奈子に「真実ちゃんうまくやったよね」と言われる場面は、真実も結局は傲慢だったんだと思いました。
その場面が美奈子たちの捏造ではなく事実だとわかった時はぞっとしました。
私も、真実は弱者として同情されても、真実の本音は好きになれない。嫌いだとすら思いました。
ただ、この小説を読むと誰もが自分を振り返りたくなると思うのですが、私も弱者でしたが、傲慢さはあったと思います。
(この場で赤裸々に語ることはしたくないですが)
でも、その傲慢さというのは、決して尊大なのではなく、人間として最小限必要な尊厳のようなものではなかったかと私は思うのです。
それがなければ、自分が自分でなくなってしまうくらいに。
最後の朝井リョウさんの解説で、この小説がヘビーなのは「何か・誰かを”選ぶ”とき、私たちの身に起きていることを極限まで、解像度を高めて描写することを、主題としているからだ」
とありますが、全くその通りだと思います。
人を選ぶなんて、本当に嫌なことでもあり、自分にとっては最も大切かもしれないことですから。
- 感想投稿日 : 2022年10月21日
- 読了日 : 2022年10月21日
- 本棚登録日 : 2022年9月26日
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