<中野新治さんの解説より>
塔和子がハンセン病患者としての重い半生を初めて直接に詩として表現したのは、第三詩集『エバの裔』においてでした。
「痛み」より
世界の中の一人だったことと
世界の中で一人だったことのちがいは
地球の重さほどのちがいだった
投げ出したことと
投げ出されたことは
生と死ほどのちがいだった
捨てたことと
捨てられたことは
出会いと別れほどのちがいだった
塔の作品は患者としての苦悩の表現に留まることなく、青春の光と影を表現した文学として人々に開放され、多くの若者の読者を得ることとなりました。十三歳で発病し、十四歳で隔離され、二十四畳の大部屋に十三人で生活することを強いられた塔の、それ故に色あせることのない青春が作品を産みつづけたのです。色あせることがないという、もう一つの痛みを秘めながら。
以上抜粋。
本当に塔和子さんの詩には心を揺さぶられるものが多く、なぜこんな過酷な状況におかれて、このような素晴らしい詩がかけるのかと、何度読んでも感動します。
「純潔」「かずならぬ日に」「淡雪」「今は」「春がここに」「選ぶ」「誕生日」「レモンスカッシュ」もよかったです。
吉永小百合さんも
「人間として生きるための壮絶な思いが込められた塔和子さんの詩に心が震えました」というメッセージをよせていらっしゃいます。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
塔和子 詩集
- 感想投稿日 : 2019年6月29日
- 読了日 : 2019年6月29日
- 本棚登録日 : 2019年6月29日
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