最近読んだ小説の中で最も衝撃的でした。
1937年からのパリと2001年9月11日からのニューヨークが舞台です。
まず『暗幕のゲルニカ』というタイトルはどういう意味だろうと考えながら読み始めました。
パリのパートでは、世界一著名な芸術家であるピカソと、写真家のドラの芸術家同士の恋愛も面白く、名前だけしか知らなかった、ピカソという人間を初めて知った気がしました。
2001年からのニューヨークのパートでは同時多発テロでスペイン人の夫を失ったMOMAのキュレーターの八神瑤子が活躍します。
そして、私も、三分の一程、読み進めたところで、この作品の著者は、この作品で訴えたかったことは、何なのかと考えだしました。読みながら、本の表紙のゲルニカの絵は何度も見直しました。
緊迫したゲルニカの争奪戦を読み、絵画が、世界にこのような大きな影響を与えうるものだと初めて知りました。
人類の至宝ともいうべき文化財が政争の具にされてしまっていることも。
「もうやめろ、とピカソは叫んでいる。殺すな。戦争をするな。負の連鎖を断ち切れ。取り返しがつかなくなる前に」「ピカソが、私たちが、戦っている敵は、戦争そのものなんだ」
エンターテインメントとしても、大変面白い読み物でしたが、読んでいてリアルな緊迫感がありました。
以下、完全にネタバレですのでご注意を。
作者はゲルニカを以下のように描写しています。
「そこには爆撃機も、戦車も銃も描かれていない。累々たる死体も、破裂した内臓も、血の一滴も、どこにも見当たらない。それでいて、それは、人類が初めて体験した「空爆」の瞬間の再現であり、悲惨極まりない戦争の記録であり、生々しい殺戮の記憶であった。悲しみと怒りに満ちた地獄の黙示録であった」
この作品を読んだことは、忘れたくないと思いました。
- 感想投稿日 : 2019年4月22日
- 読了日 : 2019年4月22日
- 本棚登録日 : 2019年4月22日
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