オブリヴィオン (光文社文庫 と 22-3)

著者 :
  • 光文社 (2020年3月12日発売)
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5

吉川森二37歳は妻の唯を誤って殺してしまい、六年間服役して出所しました。
堀の外では実兄の吉川光一42歳と義兄の長嶺圭介47歳が待っていました。
森二の父親は生前理髪店を経営していましたが、ギャンブルにのめり込み、長男の光一はヤクザになっています。

森二は妻の唯と娘の冬香を深く愛していましたが、冬香と自分がDNA鑑定の結果血縁がないということが判明し、妻を問い詰め、誤って殺してしまいます。

義兄の圭介とは17歳の時出会い、唯と圭介は両親を4年前に亡くし二人で暮らしていました。
圭介は森二が光一とともにヤクザの道へ入っていこうとするのを、止めて、大検を取って、大学入学するのを勧めてくれ、自宅に招き、毎日森二の勉強をみてくれ大学を卒業させてくれた人物です。
唯との結婚後も二人の付き合いは続き、森二ら家族三人と一緒にしばしば、食事をする仲で、圭介は冬香を溺愛していました。
冬香が実子でないことを知ってからは、森二は血のつながらない兄妹であると聞いたことから、圭介と唯の仲を疑い始めます。

一方、光一は出所した森二を、ヤクザの世界へ引っ張りこもうと手下の加藤・持田とともに、森二に嫌がらせを始めます。

森二のアパートの隣の部屋に住むハーフの少女、沙羅が森二に助けてもらったことから、訪ねてきた10歳になる冬香の面倒をみてくれたり何かと世話を焼いてくれます。

森二には光一ら家族しか知らないギャンブルに強い勘が働き大当てするという特殊能力があり、そのために大きな事件にと発展していきます。



またヤクザの話か…と思いましたが、これは文句なく面白かったです。
森二と圭介の最初の結びつきの話は大変気持ちよく読めて、まさか冬香が圭介の子どもだったら嫌だなと思いました。
そしたら、この作家さん独特の横溝正史ばりの事実が待ち受けていました。
とんでもない結末ですが、これも悪くないと思い納得でした。
ただひとつ、唯が生き返ることがないのが、残念ですが、沙羅という少女の登場が救ってくれている気がします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年8月31日
読了日 : 2020年8月31日
本棚登録日 : 2020年7月14日

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