読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫 ハ 46-1)

  • 筑摩書房 (2016年10月6日発売)
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感想 : 170
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この本はタイトルが胡散臭いなあと思いましたが、30か国で大ヒットしたフランス発のベストセラーだそうです。

かなり長い事積んでいて、読んでみると内容はしごくまっとうで、非常に良書だと思いました。
「読んでいない本について堂々と語ること」は悪いことではなく、むしろ推奨されるものであるということがわかりました。
以下重要と思われた部分。

〇本書は<読んでいない本についてのコメントを求められるという状況に対するテクニックを提案する>
〇どんなに熱心な読書家でも、すべての本を読む時間はない。
〇教養があるとは、しかじかの本を読んだことがあるということではなく、全体のなかで自分がどの位置にいるかが分かっているということ。本の内容は知らなくてもその位置関係が分かっていること。『ユリシーズ』を読んでいなくても位置が分かっていればよい。
〇<共有図書館>を把握していることが書物について語るときの決め手となる。本を読まない人間と読書と無縁な人間とは本に対する態度においても、その奥にある動機においても違う。
〇ある本を深くは読むが、それを位置づけられない者と、いかなる本のなかにも入ってゆかないが、すべての本のあいだを移動する者の、どちらがよりよい読者といえるだろうか。
〇文学について考察しようとする真の読者にとって、大事なのはしかじかの本でなく、他のすべての本の全体であり、もっぱら単一の本に注意を向けることは、この全体を見失う危険をともなう。
〇一冊の書物は、私が<共有図書館>と呼んだ大きな全体のなかの一要素にすぎないので、評価するのにそれをくまなく読んでいる必要はない。大事なのは、それが<
共有図書館>のなかで占める位置に似ている。
〇しかじかの本を読んでいないとはっきり認めつつ、それでもその本について意見を述べるというこの態度は、広く推奨されてしかるべきである。
〇読んでいない本について語る方法を学ぶということが、創造の諸条件との出会いの最初の形である。教養に従事するすべての者にはこの実践の意義を説く責任がある。
〇学生たちは学校で本の読み方や、本についいて語る方法は教わっているが、読んでいない本について語る方法を教えることは学校のプログラムには欠けている。つまり、教育が書物を脱神聖化するという教育本来の役割を十分果たさないので、学生たちは”自分の本を書く権利”が自分たちにあるとは思わない。
〇本書の目的のひとつは「読書コンプレックス」からわれわれを解放することである。
〇「読んでいない本について語る」行為がめざすべきゴールとしてむしろ「自分自身について語ること」に結びつけられている。
〇本がわれわれの内部にすでに書かれてあるのだとしたら、それを「読んで」いなくても自信をもって語っていいのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 読書術
感想投稿日 : 2021年3月19日
読了日 : 2021年3月19日
本棚登録日 : 2021年1月1日

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