チグリジアの雨

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2021年10月15日発売)
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本棚登録 : 313
感想 : 32
5

どれほど残酷な記憶だとしても、
君と一緒に過ごした日々を、
僕は永遠に忘れることはできないだろう。

今も世界のどこかで、
紫色の雨が降り続いているはずだから。


東京の中高一貫校から母の再婚によって転校した成瀬航基は転校先の高校の体育教師である継父が生徒の安藤菜々子にセクハラをしたという噂が流れ、クラス中の酷いいじめに遭います。
いじめの首謀者は絹川淳也で菜々子に好意を寄せる男子生徒です。

家族とも上手くいかなくなった航基は、遺書を書いて自殺をはかろうとしたところ、同じクラスの月島咲真に止められます。

そして航基は咲真の手引きによって同じくいじめに遭っていた青柳麻衣と共に三人で淳也を殺す一歩手前まで痛めつけます。

咲真は、11月25日を「世界報復デー」として理不尽に人を苦しめた奴らに同等の痛みを感じさせる日にするのだと言い放ち、航基のパソコンから世界中の子どもたちにメールを送っています。

全部ストーリーを紹介したいくらいですが、無理なので端折りますが、咲真はなぜか学校に来なくなり、航基は咲真の言葉によって真実を知ろうとし、継父の無実を知り、いじめていた生徒たちに自力で反撃します。

そして最後の第四章は涙腺のそれほど緩くない私でも涙なしには読めませんでした。
描いてある言葉、すべて書き写したいくらいですが、この作品に興味を持たれた方は読んでみてくださいとしか言えません。

航基と咲真の間にはこれ以上ない絆が結ばれていました。
咲真の世界に発信した想いも届けられるようにと願ってやみません。

私は日本の15歳から20歳の死因のトップがまさか自殺だとは知りませんでした。
そうした子どもたちにも是非読んで欲しい本です。
小林由香さんの本はこれで4冊目ですが、一番よかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年11月24日
読了日 : 2021年11月24日
本棚登録日 : 2021年11月10日

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コメント 2件

くるたんさんのコメント
2021/12/01

まことさん♪こんばんは♪
まことさんのレビューで読んだ時のあの涙と思いがよみがえりました。

本当にあの手紙といい、グッとくるものがありましたね。
この作品で救われる中高生が一人でも多く増えますように、私もそう願います。

まことさんのコメント
2021/12/01

くるたんさん。
あの手紙は、涙なしには読めなかったですよね。
思春期の子どもの死因が自殺とは、知りませんでした。

そして、くるたんさんがお元気でよかったです(*^^*)

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