目の見えない白鳥さんとアートを見にいく

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  • 集英社インターナショナル (2021年9月3日発売)
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「Yahoo!ニュース 本屋大賞2022年ノンフィクション本大賞」。受賞作。


白鳥建二さん。51歳、全盲。
年に何回も美術館に通うー。
「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」
という友人の一言で、アートを巡る旅が始まった。

目が見えないひとが美術作品を「見る」って、どういうことなのだろう。と私も思いました。


視覚とは「目」や視力の問題だと考えられがちだが、実際は脳の問題であるそうです。

本文より
目が見えないひとが傍にいることで、わたしたちの目の解像度は上がりたくさんの話をしていた。(中略)だから本当の意味で絵を見せてもらっているのは、実はわたしたちのほうなのかもしれなかった。(中略)でも、肝心の白鳥さんは楽しんでくれているのだろうかー。

彼は「わかること」ではなく「わからないこと」を楽しんでいるのか。

白鳥さんはオーディオガイドを聞かない。
彼が求めているものは、音楽にたとえれば、CDでなく生演奏、それも即興のジャズだった。

白鳥さんは「全盲だけど展覧会が見たい。誰かに案内をお願いしたい」とリクエストされて、アートを見るようになったそうです。

また、著者は
みんなでみていると知らず知らずのうちに作品の核心に近いところまでたどり着く。ひとりでそこまでたどり着くのは難しいが、みんなで色々と話しているうちに「実はそうなのかも」というところまで行けちゃう。だからほかのひとと話ながらみるって面白い。
とも述べられています。



障害のある人と健常者との固定観念を崩す、かかわり方の教科書といえると思いました。

白鳥さんは毎日散歩に出かけて、写真をデジカメで撮ったり、大好きなピアニストの小曾根真さんと映画を撮ったり、毎日積極的に外部と様々な交流をしています。

そしていつも「ありがとう」と言う側だったのが、いつの間にか、白鳥さんが「ありがとう」と言われる側に逆転しています。

もう、障害者とか健常者とか超越した、人間の在り方だと思いました。
ごく、普通の人々はこんなに様々な活動をしていません。
なんとも行動力と周囲の人間に恵まれているというか、自分で引き寄せていらっしゃるのですね。

白鳥さんは、形は違っても、生き方を真似したい人だと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2022年11月30日
読了日 : 2022年11月30日
本棚登録日 : 2022年11月11日

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