イコ トラベリング 1948-

  • KADOKAWA (2022年9月28日発売)
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感想 : 33
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西田イコ、23歳。
ブラジル行きの船にたったひとりで乗っているところから物語ははじまる。

13歳、16歳、18歳、22歳。
戦後まもなくの焼け野原の東京でイコは女子中学生をしている。
戦争のあいだ、敵国語として禁止されていたイングリッシュが編入した中学校ではかなり進んでいてイコはどうしてこんなに発音がいいのと先生をずるいと思ってしまう。
どうしてずるいと思うのか。
この前まで戦争をしていたのに全部なかったことみたいにしてる。
灯火管制もなくなり電気がついて、食糧はまだ不足しているけど平和を生きている。
でも、もしも戻っちゃったら? 明日戦争が戻ってきたら? とずっと思っている。
作品を通してこのもしもは続いている。
新しい価値観にイコは毎日わくわくしていて本のなかから飛び出しそうだ。
新しい友だち、新しい学校生活、時々戦争の残した影があらわれる。
それから、女性ひとりでどこにでも行けるということ。
神田の古書街、新宿の紀伊國屋書店、小岩の映画館、イコはどこにでもひとりで行けるようになる。
まわりの友だちも個性的だ。
イコは友だちや出逢った人たちに影響をうけ、何を自分がやりたいのかきちんと考えるようになる。
早稲田大学へ進学し、英語を学んで世界を広げていく。
たくさんの物語の種みたいなものがちりばめられていてそれだけでも読んでわくわくする。
角野栄子さんが書かれたたくさんの物語に繋がっていくような気持ちになる。

角野栄子さんの自叙伝的物語だけれど、イコの進む道は過去だけじゃなくこれからの未来も考える力になる物語だと思う。

私も明日、戦争が来ないように世界を見ていかなくてはと心にきざんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年10月31日
読了日 : 2022年10月26日
本棚登録日 : 2022年10月24日

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