知性とは何か(祥伝社新書) (祥伝社新書 420)

著者 :
  • 祥伝社 (2015年6月1日発売)
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感想 : 36
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本書は、いま、日本に蔓延している「反知性主義」について、具体的事例を紹介しつつ、それに対抗するための「知性」を体得するためにはどうすればいいかを提示している本である。

ちなみに「反知性主義」とは、「実証性と客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するような世界を理解する態度」のことで、歴史修正主義、ナショナリズム、国語力の低下などさまざまな局面で起きている、のだそうだ。

簡単にいえば、
・自分の発言の影響が想像できない
・一つの事実に複数の見方があることが理解できない
・他人の気持ちになって考えることができない
・事実に基づいた反証を受け入れない
という特徴がある人たちということだろうか。

そんな反知性主義に対抗するためには「知性」が必要であると、著者は説く。具体的には、
・読書によって優れた先人の業績を解釈もしくは再解釈して知性を復権すること
・他人の気持ちになって考えることができるようになること
・近過去に目を向け、そこで強靭な知力によって反知性主義と闘った人々の経験を追体験すること
・目には見えないが、確実に存在する人間の心の働きを、客観性、実証性、合理性よりも重視し、お互いの心を理解すること
等により、反知性主義を克服し、反知性主義者を公共圏から排除するのだという。

非常にいい内容だったと思うのですが、なぜ政権批判をしたのか。
著者は、売れるからと言って「嫌韓本」等の感情をむき出しにした批判本はいかがなものか疑問を呈しているが、この本のような「反アベ本」も同じように見られるのだということは理解しているのだろうか。
政権批判をしなくても十分にいい本だっただけに、その点が鼻についたのは残念である。

なお、「知性」を体得するための、読書術及び外国語学習法は参考になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2019年9月1日
読了日 : 2017年9月16日
本棚登録日 : 2015年7月18日

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