徴兵制 (岩波新書 黄版 143)

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  • 岩波書店 (1981年1月20日発売)
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小銃の発達が歩兵の有効性を高め、徴兵軍隊を生んだ。徴兵制の背景には技術的、戦略的な理由があるのだが、20世紀の徴兵制の背景には政治的な理由が見え隠れした。
欧米近代の戦史から書き起こして日本陸軍の徴兵を重点的に論じることで、民兵がない日本での徴兵が生んだ矛盾を露わにしている。
出典は不明だが「1970年のオランダ軍について、徴集兵の受け持つ軍隊の仕事の72%は初等教育以上の水準を必要とせず、大学卒業の水準にふさわしい仕事は2%しかない」ので、「国を守る気概」を維持できようか、という指摘は興味深い。
「現代の徴兵制とは、国家の強制力によって、軍務の名のもとに雑多な雑役に使役される強制労働従事者を安上がりに徴集する制度にほかならない。」 ちなみに1981年の本です。
ハーグ陸戦条約において、交戦者とは「公然と兵器を携帯している」民兵、義勇兵も該当するので、もしも「本土決戦」が行われていたら、手製の竹槍しか持たない国民義勇戦闘隊を交戦者として認めるかどうかでアメリカ軍の法務担当者を悩ませただろうという記述は、笑い事ではないですねー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2018年12月30日
読了日 : 2018年1月6日
本棚登録日 : 2018年12月30日

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