日本近代史 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2012年3月5日発売)
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感想 : 76
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幕末から昭和初期までを解説する一冊。
教科書の年表では1行で述べられる事件・出来事を有機的なものとして関係づけていることに価値がある。

たとえば、
板垣退助がうっかり(?)「納税者には政治参加の資格がある」と書いたことが、当時唯一の国税(地租)納税者であった地主層の政治意識を刺激し、開設された国会においては地主層の主張(地租軽減)が主流になり、「超然主義」を生んで膠着状態になったが、日清戦争の賠償金を地方振興に回すことで地租軽減の代わりとし(インフレによって絶対額であった地租の負担が相対的に低下したこともあって)、政府と結びついて利益誘導を図る自由民主党の源流が生まれた…
のような感じで、連続的な因果関係が述べられている。

一方で、その時々において複数の主張・勢力が争っている様も描かれていて、歴史の進展が一直線な、必然的なものではないこともわかる。

それだけのことを丹念に述べるのだから、新書版で400ページを超える大部になるのも無理はない。
その作業を追いかけて読み終えたところで「あとがき」の一文はとても説得力がある。

「「国難」に直面すれば、必ず「明治維新」が起こり、「戦後改革」が起こるというのは、具体的な歴史分析を怠った、単なる楽観にすぎない。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2020年7月23日
読了日 : 2020年7月23日
本棚登録日 : 2020年7月23日

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