建築家、妻木頼黄を通して、在りし日の東京の風景が垣間見えた気がした。
江戸からすっかり様変わりしてしまった、その光景に一種の無力感や恨みを抱きながらも、西欧の建築技術にも精通し、求められる光景の中に自らの?日本の?信念を体現させようとする。
建築家としての作品、というスケールを遥かに超えて、遺り続けるものの命脈をカタチ作ろうとする、まさに偉業と言える。
その最たるものが、国会議事堂だった。
建物を建てる側の棟梁達を前にすると腰低く、けれども、仕事は緻密になそうとする妻木の人柄が、とても良く描かれていたと思う。
読み終わって、妻木や辰野金吾が設計したものをあらためて調べてみたのだけど、今なお補修されながら残されているものが多く、驚いた。
(中には、えぇっ、行ったことあるけど、知らなかった!という場所も)
土地のシンボルとして、愛されていることを二人が知ったら、どんな風に思うのかな。
町並みは、人と同じで、我が我がという主張だけでは調和が取れない。
そして、景観そのものが一つのコミュニティとして、地域に住む人の誇りを生み出したりもする。
私も、大学のキャンパスが、鹿鳴館よりも古くに建てられたもので、そういう場所に通えることが嬉しかったことを思い出した。
ただ単に永い時間が経った建造物というのではなく、明治期の建物が愛されるのは、作り手の信念や情熱のようなものが込められているからだろう。
勉強になりました。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2021年
- 感想投稿日 : 2021年12月23日
- 読了日 : 2021年12月23日
- 本棚登録日 : 2021年12月23日
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