チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1982年9月28日発売)
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本棚登録 : 2766
感想 : 272
3

父が法王に選ばれた時から死に至るまで、読み終わって、この量に随分圧縮されたんだなという感想。
作者の筆致はとても濃密なのだが、要所をていねいに取り上げていて、きっと現実的な時間感覚で取り上げてしまったら何倍の量になっていただろう。

父によって枢機卿に選ばれ、緋のマントを身につけていた頃は、まだ聖職者としての面影もあったように思うけれど……。
それでは、「ここまで」しか行けないという、限界も見えていたのだろうか。

金と力を手にし、還俗するという荒技を為してしまう中盤は、フランスを盾に持ち、イタリア中をボコボコにして回り始めるチェーザレ。
他の本では、殊にその美貌を取り上げられていたりするけれど、備わっているものでは満たされないのか……。

正直、この中盤はもっと描かれても良いと思うけど、全体から見ると致し方なし。
マキアヴェッリとかダヴィンチとかのくだりも、短いけどめちゃくちゃ面白い。
君主論未読が悔やまれる。

マラリア感染以降、おのれ後一歩で、、、の展開を迎えるチェーザレ。
まさに波乱万丈。
たった一人の青年に、これだけのドラマが詰め込まれる。人間、恐るべし。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年9月17日
読了日 : 2020年9月17日
本棚登録日 : 2020年9月17日

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