夜の鼓動にふれる: 戦争論講義 (ちくま学芸文庫 ニ 12-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (2015年8月6日発売)
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感想 : 12
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ちくまプリマーで、中高生向きの講義がとても面白く分かりやすかったので、読んでみたいと思った著者。分かりやすい!

この本の趣旨を引用すると、
「戦争を考えるということを、わたしたちの日々の生存や人間の歴史的経験のなかに置き直して、〈戦争〉を専門家たちの特殊な考察の対象とするのではなく、一般の人びとの生存と地続きのものとして扱いたかったからです。」

〈戦争〉を繰り返す人間って何なのか?
人間は本能的に〈戦争〉を行ってしまう生物で〈夜〉の世界を抱えている。

人が人間になり、社会が生まれ、国という集合体の中でその権威を守るための戦争に繋がってゆく。
ただし、その状況が進んだところにアウシュビッツとヒロシマが生まれた。
それは、人が人ではなくなること。システム的破壊と、人という生物の崩壊を意味する。

そこで、人間はこの切り札をちらつかせることで、戦争にそれ以上の進展を持たさらないための引き換えの平和?を手にする。
それもまた、切り札を切り札と捉えない〈テロリスト〉の出現により、非対称な戦争は新たな局面へと向かっている現状である。

だが、〈テロリスト〉と呼ぶ者は誰で、呼ばれる者は誰なのか。
筆者が言うように「罰されずに殺すことの出来る者」をまたもや生み出しているという言葉には、なるほど、と思った。

「かつて日本で「散華」とか「玉砕」と美化された振る舞いが、欧米人には理解しがたい狂気の行動としてこの名で記憶に刻印されていたのです。それがいまの日本語では「テロ」ということになってしまいます。このことは、日本で戦争を振り返るときに、よく考えてみる必要があります。」

あらゆる自然を資源とし、そこから強大なテクノロジーを生み出してきた人間は、〈死〉さえも超越しようと目論む中にいる。
体内に自分のものではない薬や、血や、臓器を取り入れて〈生〉を獲得する人間。
一方で同じ技術を使ってボタン一つで崩壊させ、また人が人でなくなるような暴力を行使してしまえる人間。

私たちの存在とか如何なるものか、確かに考えずにはいられなくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年
感想投稿日 : 2016年1月3日
読了日 : 2016年1月3日
本棚登録日 : 2016年1月3日

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