世界幻想文学受賞作。
アンナ・スメイル氏がどういった方なのか、調べてもよく分からなかったが、ニュージーランドの作家さんと聞いて、ちょっと親近感。
しかし、序盤は、割と頭の中がゴチャゴチャした状況で読んでいたからか、ぜんっぜん、入って来なくて三回くらい読み直した。
鐘の音が一体何なのか、サイモンは一体何を知りたいと考えているのか、人々はどのように生活しているのか……。
世界観がピタリと収まるのが、割と中盤に近いくらいなので、そこまでは辛抱でした。
我慢です。我慢。
で、世界観が唐突にハマるものだから、そこからの展開が早い早い。面白い。駆け抜けて、クライマックス、からの、えええぇー!?な最後(笑)
雑な説明すぎる。。。
ネタバレし過ぎると良くないので。
音楽という「調和」を重んじるということは、それが秩序であり、理性であることを指す。
この作品で、音で織りなす旋律は、記憶よりも確かな唯一無二のアイデンティティであり、繋がりであり、自身の生さえ左右する。
誰もが、出自を歌い、行き交う道を歌い、誰かの歌に、鐘の歌に耳を澄ませる。
けれど、本来人間は「不調和」なもので、めいめいに好きな音を生み出す存在だ。
結局、秩序を前提に統率された世界は、ディストピアにしかならなくて、でもそのディストピアには一定数の信者と恩恵が確かに存在する。
世界を変革するという選択には、いつだって、背負わなければならない「その後」が待っている。
物語がその部分をどう描くかが、いつも気になるのだけど、そこにアンナ・スメイル氏のメッセージがあるように思う。
- 感想投稿日 : 2018年12月24日
- 読了日 : 2018年12月24日
- 本棚登録日 : 2018年12月24日
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