最後のトリック (河出文庫 ふ 10-1)

著者 :
  • 河出書房新社 (2014年10月7日発売)
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本棚登録 : 3924
感想 : 434
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「お父さん、これ面白いよ。読んでみる?」

中学生の次男坊から勧められて手に取った。

「犯人は読者である」

ミステリーの歴史の中で出し尽くされたアイディアのなかでも、これこそ究極のトリック。

だが、そんなことが可能なのだろうか?

一歩間違えば茶番になりかねない。

それは杞憂だった。
圧倒的な筆力とリアルさで、作家深水黎一郎の世界に引き込まれていくからだ。

散らかったように思える物語の要素が、中盤以降一つ一つ丁寧に回収されていく見事な展開。

「そう、私は取り引きがしたいのです。私のアイディアを貴殿に売りたいのです」

作家に手紙を送り続ける、香坂誠一の人生に気がつけば共感している自分がいる。

その運命を、宿命を何とかしてあげられられなかったのかと、我が友のように思いを馳せてしまう。


「やっぱりさ、確かに読者が犯人だよ、この小説」

そう言われて息子に手渡されたこの本。

たしかにその通りだ。

犯人は間違いなくこの本を読み切った読者に他ならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年2月13日
読了日 : 2020年2月13日
本棚登録日 : 2020年2月13日

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