「お父さん、これ面白いよ。読んでみる?」
中学生の次男坊から勧められて手に取った。
「犯人は読者である」
ミステリーの歴史の中で出し尽くされたアイディアのなかでも、これこそ究極のトリック。
だが、そんなことが可能なのだろうか?
一歩間違えば茶番になりかねない。
それは杞憂だった。
圧倒的な筆力とリアルさで、作家深水黎一郎の世界に引き込まれていくからだ。
散らかったように思える物語の要素が、中盤以降一つ一つ丁寧に回収されていく見事な展開。
「そう、私は取り引きがしたいのです。私のアイディアを貴殿に売りたいのです」
作家に手紙を送り続ける、香坂誠一の人生に気がつけば共感している自分がいる。
その運命を、宿命を何とかしてあげられられなかったのかと、我が友のように思いを馳せてしまう。
「やっぱりさ、確かに読者が犯人だよ、この小説」
そう言われて息子に手渡されたこの本。
たしかにその通りだ。
犯人は間違いなくこの本を読み切った読者に他ならない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年2月13日
- 読了日 : 2020年2月13日
- 本棚登録日 : 2020年2月13日
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