日本語を、取り戻す。

著者 :
  • 亜紀書房 (2020年9月10日発売)
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本棚登録 : 273
感想 : 38
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ー私たちが暮らす世界では、なぜ〝ことば〟がここまで空疎なものになってしまったのか!?ー
この紹介文に惹かれて手に取った。おそらく、安倍政権の政策に対する批評本、と言う紹介文だったら手に取らなかったと思う。なぜなら、私は「日本語」に興味があるから。政治・経済よりも「言葉」。
正直、政治も経済もよく分からない。最低限、社会人なのだからと自分に言い聞かせて、いくつかのニュース番組を見たり、新聞を読んだりはするが、何が問題になっているのか、いまいち理解できなかったり、用語がわからなかったりすることもある。
だから、安倍さんの政策について、正しく賛同も批判もできないと自覚している。
それでも、適切に表現できない違和感がずっとあった。
そして、この本の紹介文を目にした時、そう、「ことばの空疎さ」だ。これだ!と思ってしまった。

公文書の破棄・隠蔽・改竄、「理解」という言葉について、「代案」がないといけないのか、などなど、興味深いコラムは沢山あったのだけど、
先に書いた通り、自分が抱いていた違和感について、すごく的確にわかりやすく著者が示してくれていたところがあったので、レビュー代わりに残しておこうと思う。
『安倍晋三氏の政治手法に苛立つ理由は、おそらく、私の目から見て、彼が政治家というよりは扇動家(アジテーター)に見えるからなのだろうと思っている。政治家とアジテーターの何が違うのか正面切って問われるとちょっと困るのだが、ともあれ、安倍さんの持ち出してくるスローガンが、具体的な政策であるよりは、イデオロギーに近い何かに見えることは確かだ。』
アジテーターとは、少々過激な表現にも思えるが、でも私が感じていた違和感・もやもや・イライラは、結局、この一節に集約されていると感じた。
そして、この一文の次のコラムで、著者は『最大の罪は国の文化と社会を破壊したこと』と、これまた少々過激とも思えるタイトルで記しているのだが、この短いコラムも、この本全体を通して、著者が訴えていることの根本をなすと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセー・コラム
感想投稿日 : 2020年12月18日
読了日 : 2020年12月17日
本棚登録日 : 2020年11月9日

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