石油・武器・麻薬 中東紛争の正体 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2015年12月17日発売)
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イスラムではムスリムが守るべき5つの行いとして「信仰告白」「礼拝」「喜捨」「断食」「巡礼」という基本的な義務を求めており、それがイスラムという宗教の基本的価値観を表し、ひいては交流において非常に大切な考えをも示す。コーランとイスラム法は、喜捨が貧者、孤児、未亡人を支援し、奴隷や債務者を解放するために、またイスラムの普及のために用いられるべきであると説く。このようにイスラムは社会的平等を説く宗教であり、イスラムには信徒間の相互扶助の考え方が底流にある。ところが、近年、神の前の人々の平等を説いているはずなのに、途方もない貧富の差がある。イスラム世界の現実が合致しておらず、特に一部の特権階級や政治指導者たちが贅沢な生活を享受している。これは、イスラムの社会的正義の理念に反するもので、イスラム勢力の中で強い反発を招く一方、救貧活動や慈善事業を行うイスラム原理主義者が多くのムスリム大衆の間で支持を得る背景となっている。中東各地で発生している紛争や暴力の背景には、必ず貧困や格差といった経済問題が横たわっている。中東への進出に積極的な中国の姿勢や、麻薬が武装勢力の重要な資金源となっている実態などを紹介するとともに、イスラム諸国にとって戦略物質ともいえる石油を巡る闇に迫る。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2016年2月26日
読了日 : 2016年2月26日
本棚登録日 : 2016年2月26日

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