新書839「おもてなし」という残酷社会 (平凡社新書 839)

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  • 平凡社 (2017年3月15日発売)
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日本人の心の深層には、自分の非を認めず自己正当化するのは見苦しい、みっともないといった感受性が根付いている。そのため、自分の非を認めずに自己正当化に走る人物は自分勝手な未熟者とみなされ軽蔑される。また、心の深層には、非を認めて謝っている人物はそれ以上責め立てるのは無粋であり、みっともないという感受性がある。そのため、自分の非を認めて謝る人物は、その潔さが評価され、寛大な対応がなされるのが普通である。このように自己正当化が嫌われ、謝罪が評価される日本にあっては、すぐ謝ることが当たり前になっている。謝ることによって場の雰囲気がよくなりお互い様といった感じで歩み寄ることができるからである。ところが、この日本人特有の文化的背景があるにもかかわらず欧米の価値観をむやみに取り入れてしまったため、過剰なお客様扱いが客の勘違いを助長させている。人間、誰しも自己愛が強く甘やかされれば図に乗ってしまう弱い存在。過剰なお客様扱いが客の自己愛を不必要に増長させ、気持ちよく働ける労働環境を破壊しつつある。かつてお互いさまの精神によって噛み合っていた気遣いと感謝のバランスを過剰なお客様扱いを推奨する風潮が崩してしまったのだ。客に対してキレそうな気持ちを必死に抑えながら、心は次第に蝕まれ追い込まれていく。労働政策研究・研修機構は過半数の職場でメンタルヘルスに問題を抱えている正社員が存在することを明らかにしている。間柄文化特有のお互いさまの精神が崩れ、多くの労働者の心は爆発寸前の状況にある。心の不調を訴える労働者が急増している中、「おもてなし」の在り方を見直し日本の良風美俗を再び取り戻さなければならない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2018年3月4日
読了日 : 2018年3月4日
本棚登録日 : 2018年3月4日

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