もともと好きだった方丈記。もともと好きな作家の玄侑宗久。方丈記が800年前の火事・地震・津波・竜巻の記録満載なことは知っていたので、どう今の福島と絡めてくるかに興味がありました。
驚いたのは、地震のあとしばらく本をよむことができなかったというくだり。実は私も震災後半年ぐらいは、本が読めなくなりました。当時本を「読まなければならない」事情があったのですが、読んでも読んでも目が上滑りして頭に入らず、好きだった本すら手にとる気にもならず、本当に困りました。プロの作家、僧侶という立場の人でも本が読めなくなっていたんだ。と妙なところで安心しました。
もう一つ個人的に驚いたのは、黒澤明の映画「夢」で「放射能の姿を見せるために毒々しいピンクの色をつけましたが、」とあるところ。私はこの映画を昔昔に見たはずなのに、この挿話のことを完全に忘れていて、でも原発事故の話を「どこかできいたような・・・チェルノブイリではなく」とずっとひっかかっていました。このくだりで「え、そんな話あったっけ?」とネット検索し、「ああ、デジャヴ感はこれだったんだ」と納得しました。
このように、この本は単なる方丈記の現代語訳ではありません。800年前の京と今のフクシマを縦横無尽に行き来します。西日本でも、東日本でも、800年前でも現代でも似たようなもの。そう思わせてくれる本でした。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年12月1日
- 読了日 : 2013年4月20日
- 本棚登録日 : 2013年12月1日
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