無常という力: 「方丈記」に学ぶ心の在り方

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  • 新潮社 (2011年11月25日発売)
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本棚登録 : 102
感想 : 12
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もともと好きだった方丈記。もともと好きな作家の玄侑宗久。方丈記が800年前の火事・地震・津波・竜巻の記録満載なことは知っていたので、どう今の福島と絡めてくるかに興味がありました。
 驚いたのは、地震のあとしばらく本をよむことができなかったというくだり。実は私も震災後半年ぐらいは、本が読めなくなりました。当時本を「読まなければならない」事情があったのですが、読んでも読んでも目が上滑りして頭に入らず、好きだった本すら手にとる気にもならず、本当に困りました。プロの作家、僧侶という立場の人でも本が読めなくなっていたんだ。と妙なところで安心しました。
 もう一つ個人的に驚いたのは、黒澤明の映画「夢」で「放射能の姿を見せるために毒々しいピンクの色をつけましたが、」とあるところ。私はこの映画を昔昔に見たはずなのに、この挿話のことを完全に忘れていて、でも原発事故の話を「どこかできいたような・・・チェルノブイリではなく」とずっとひっかかっていました。このくだりで「え、そんな話あったっけ?」とネット検索し、「ああ、デジャヴ感はこれだったんだ」と納得しました。
 このように、この本は単なる方丈記の現代語訳ではありません。800年前の京と今のフクシマを縦横無尽に行き来します。西日本でも、東日本でも、800年前でも現代でも似たようなもの。そう思わせてくれる本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年12月1日
読了日 : 2013年4月20日
本棚登録日 : 2013年12月1日

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