「才能」に振り回される人々のお話
岬先生が高校生の頃の物語。容姿端麗、圧倒的才能、さらに今より幼さが残るのも相まって、まさに少女漫画に出てくるキャラクターのよう。
過去作の主人公は、自己評価は低いが才能はあるタイプばかりだったが、今回はからっきし。だからより1層才能の残酷さが表現されていた。
1%の才能と99%の努力、について本書でも言及があったが、確かに1%があるかないかでは世界が変わってくる。その人の努力を才能だけで片付けるのは以ての外だが、努力すれば出来るというのは強者の傲慢だと思う。
人は誰しもどこか特別でありたい、だから才能というものに焦がれるし、嫉妬もする。でもいつか特別になんてなれないと悟り、漫然と日常を過ごすようになる。しかし嫉妬から逃れて才能がないと諦めて過ごすのは、人間の可能性を狭めてしまう。
作中で先生が才能の差を説くシーンもあったが、あそこまで打ちのめすならば音楽を通じて各個人の個性を見つけ、その適性を活かす方法を考える所までしなければならないのではないか。正論では何も解決しない。先生が才能の差に固執しているからこそ、あそこまで生徒に強く言ってしまうのではないか。
圧倒的才能を持ち出してあの持論を出すのは、チート武器を使ってゲームをクリアするような、気持ちよく感じてしまうがどこか釈然としない感覚だった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年5月29日
- 読了日 : 2023年5月29日
- 本棚登録日 : 2023年5月29日
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