表紙の猫のイラストが可愛らしいですが、書店の猫の日コーナーでは見かけたことがないですね…
というわけで、まったく期待していなかったのですが、とても素晴らしい物語でした。
片田舎に獣医が娘と二人で住んでいました。娘は、亡き母の代わりに、どこに行くにも猫の「トマシーナ」を連れ歩くほど溺愛していましたが、それに対して父親は動物に愛情も関心も抱きません。さらに、神を全く信じていないだけならまだしも、友人が牧師なのに神を恨みさえしています。
ある時、猫の異変に気付いた娘は、父親なら治してくれると信じて待合室へ。しかし、動物の感染症で妻を亡くした父親は、固く禁じていた来院に激昂します。そこへ追い打ちをかけるように盲導犬の急患がきて、一人暮らしの老人の目を救うことに執心し、猫をろくに診察せずに安楽死させてしまいます。
落胆した娘は、仲間とともに葬儀を行い、森の中に墓標を立てて心を閉ざします。しかし、その葬儀の様子は、森に住む「魔女」と呼ばれる女性が見守っていて…という話。
安楽死などの生死の問題や、キリスト教に限らず神との関わり方など、ちょっとした哲学的な話しもあります。しかし、いろんな伏線を回収したラストは、途中のハラハラした展開も相まって、とても心温まるものでした。
また、最初はどうしようもない父親が、周りの人たちとの関わりの中で、少しづつ優しさと愛情とは何かを、自分の中に芽生えさせていく様子は、ある意味この動物嫌いの獣医の成長物語でもあったんだなと感慨深かったです。
追記:
話しの繋がりは無いみたいですが、機会があれば著者の別の小説『ジェニィ』も読んでみたいと思いました。
- 感想投稿日 : 2024年2月21日
- 読了日 : 2024年2月21日
- 本棚登録日 : 2024年2月18日
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