JR崩壊 なぜ連続事故は起こったのか? (角川oneテーマ21)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2013年12月13日発売)
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本棚登録 : 81
感想 : 11
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久々に質の低い本を読んでしまったなーと。既存のレビューとも重複しますが、下記の点が問題。

①看板に偽りあり
『JR崩壊』と言っているが、JR北海道のことしか書いていない。冒頭で、JR北海道の問題は他のJR各社にも当てはまる、だからタイトルはこうだ、というロジックで論が始まるのだけれど、いざ読んでみると北海道の寒さでディーゼルがどうこうとかポイントがどうこうとか、沿線の距離とかがどうこうとか、ほとんどJR北海道固有の問題についてしか述べられていない。加えてJR北海道固有の問題とJR全体の問題が混同されている。そりゃ最後、有識者にも「こんなタイトルになるなんて」って驚かれますよ。

②出典が不明
途中で「JR東・西日本は整備新幹線の運用を歓迎していない」みたいな記述がありますが、ソース不明。こういうのが随所にあって、公表データと一部へのアンケート送付以外、ほとんどまともに取材していないことがわかる。

③論理があまりに稚拙
JR北海道との比較に、観光資源としての価値も維持費も物価もまったく違うスイスの山岳鉄道を引き合いに出したりと、やりたい放題。そして結論が「料金を上げれば黒字になる」というのだから、唖然呆然。著者は本当に専門家なのかと。この著者の意見は、最終章で出てくる堀内氏、石井氏のコメントにより、あっさり否定されています。

このように著者の取材やタイトル設定、肝心の論評があまりに稚拙ですが、客観的に見ればJR北海道で起こった事実関係を把握できる資料的な意味はあり、さらに堀内氏、石井氏による著者の主張を否定する、著者の論よりはロジカルなコメントを隠すことなく掲載しているので、☆2つ分の価値はあると思います。

著者の梅原氏、他の著書はなかなか好評のもあるみたいだけど、この本に関しては書いてることが本当にひどいです。この本のせいで仕事なくなるんじゃないかってレベル。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: システム
感想投稿日 : 2016年9月17日
読了日 : 2016年9月17日
本棚登録日 : 2016年9月17日

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