俳優の菅原文太と歴史研究家・ジャーナリストの半藤一利による対談本。対談は菅原からのオファーで、2009年10月と12月に行われたという。内容的に途中で終わってしまったのは、東日本大震災と東電福島第一原発事故のために菅原が被災地支援に忙しくなってしまったから、とのこと。
菅原文太が3・11後の反核・反原発運動、「特定秘密保護法」反対運動にコミットしていたことは知っていたが、これほど熱心に日本近代史を勉強していたことは知らなかった。長谷川伸(!)の股旅ものへの共感から、赤報隊・相楽総三から幕末維新期の陰謀にいいように使われ、排除されていった「アウトロー」たちに対する関心をふくらませていく。戊辰戦争と西南戦争との間に政治=軍事的な切断を観取する視点も重要。戊辰戦争で勝海舟はナポレオンのモスクワ撤退の際の経緯を参照し、西南戦争の政府軍勝利には、テクノロジーとしての電信を活用したアメリカ南北戦争の北軍の「戦訓」が生かされていた。
巻頭に掲げられた菅原の自筆の企画書(?)はひどく達筆で、思わず見入ってしまった。字が上手なひとは、なんだか信頼できる気がしてしまうから不思議である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2024年3月27日
- 読了日 : 2024年3月26日
- 本棚登録日 : 2024年3月26日
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