人間都市クリチバ―環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり

著者 :
  • 学芸出版社 (2004年4月30日発売)
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感想 : 8
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都市開発に関してはまったくの素人ながら、
実際にクリチバに一年住んだ身の感想としては、
「褒めて褒めて褒めちぎりすぎ」である。
しかし、そこまで褒めるのはどうかと思いつつも、大変細かい点まで調べ分析の材料としており、納得できる部分も多い。
また、街は移り行くから、いつの時代の街のことを語っているのかも重要なのであろう。

クリチバは、著者が言うとおり、完璧な街ではない。
というか、この本より受ける印象よりもずっと多くの問題を抱えた街であると思う。
日本の都市のほうが住みやすいと感じた点も数え切れない。

しかし、日本の都市が見習う点も間違いなく数多くある。
予算の少なさや環境に課題があってもアイディアでまかなう姿勢、
人々の使いやすさ考えた街づくり、
いつでもたくさんの自然と触れ合える街のビジョン、
複数の課題を同時に改善するための効果的な取り組みのアイディア、
伝統的建造物や景観への意識などである。

確かにクリチバ市民には、市に誇りを持ち、
市行政を信頼している人が多いと感じた。
(もちろん様々な問題があるが、他の街と比べて)

日本の公共交通機関は確かに素晴らしいが、
文中にもあったとおり、緑もほとんどなく看板でごったがえすごちゃごちゃした東京の街並みを見るとうんざりすることもあるし、
行政と信頼関係を築けている気もしない。

世界中の都市が、互いの良いところをきちんと取り入れ、人々暮らしをよくしていけるよう、
このような都市研究がさらに発展し、政策に反映されてほしいと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 学術書
感想投稿日 : 2016年11月18日
読了日 : 2016年11月18日
本棚登録日 : 2016年11月14日

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