父親の死をきっかけに、しぶしぶ家業であるクリーニング店で働くことになった和也。しかし、店に携わるプロの仕事やお客さんの反応を目の当たりにして、前向きに仕事に向き合うようになっていく。
プロの仕事について語る文章が胸を打った。「その道の一番ではないけれど、技能と知識を持った人々。」【プロ】という言葉の持つ完璧なイメージに怖気付いて、いつまでも自分の経験や知識に自信を持てないでいた私に、「それでも、誰かより知っている何か」を持っていることの強みがあることを教えてくれた。
もう一つ印象に残る言葉は、和也が沢田に対して語っている部分で、「沢田は、関わった人の「その先」まできちんと考えているような気がする。」
これが、坂木作品を安心して読める大きな理由だと確信した。謎を解いて終わり、ではなく、その後の人々の感情やモヤモヤにも言及し、読者や登場人物を置いてけぼりにしない優しさ。
それは「切れない糸」だけでなく、他の坂木さんの書くお話にも通じるところ。それをポリシーにしている坂木さんだからこそ、他の日常系ミステリにはない魅力があり、ほっと一息つきたい時に読みたくなるお話が作れるのだと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年4月24日
- 読了日 : 2023年4月24日
- 本棚登録日 : 2023年4月22日
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