レッドゾーン

著者 :
  • 小学館 (2022年8月30日発売)
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帯には「臨床の砦」続編とあるが、第三波を描いた「臨床の砦」の前の長野県でクルーズ船の患者の受入、発熱外来やコロナ病床の設置をいち早く決めた、信濃山病院の葛藤を描く。
大変申し訳ないのだが、「臨床の砦」が文庫化され、そのあとがきを立ち読みで読んだ(購入せずにすいません)。
そこには、都内で呼吸器内科として働く作者の姉が、消化器内科の作者(本作では多分敷島のことだと思う)に対して、「専門医もおらず、未知のウイルスを受け入れるのは反対だ」のようなことが書かれていた。
どうやらお姉さんは呼吸器内科の専門医。その専門医でさえも、初期のコロナを受け入れようとする病院はなかった。
素人が見ても、そこまで専門医のいな公立病院ばかりが都道府県の要請を受け入れ、ある程度陰圧室などの設備がある大学病院が受けれいないことに不満を持っていた。
大概の人がクルーズ船内の患者だけで治まると言う、客観的な考えだったのだろう。
その中でコロナ陽性患者と向き合わなければいけなかった信濃山病院の内科の3人。弱い部分を皮肉屋の日進先生が一手に引き受けていたが、他の先生の恐怖もマックスだったと思う。
内科の3人以外、どこか他人事だった外科の千歳などの協力を得て、信濃山病院はコロナ病床を16床まで広げることが出来た。
でも、そこまでたどり着く、医師ではなく人間としての葛藤は2年以上たった今でも自分の心を揺り動かす。
「臨床の砦」以降、安曇野の救急はどうなったのか、気になっていたが、プロローグに書かれている2022年5月時点では、かなり診療にも慣れて落ち着いているように見える。
本の発売された8月下旬も、第7波が収束傾向。
しかし、本当に減ったのか、全数を止めたことによる現象なのかは分からない。
8月上旬には薬剤が足りないことも、問題になっていた。
作者は私たちにコロナの最前線を伝えながらも、今も医者として前線で闘っているのだろうか?
私たちの為に、身を削って働いてくれている作者に心より敬意を払いたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2022年9月10日
読了日 : 2022年9月10日
本棚登録日 : 2022年8月31日

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