わたし、定時で帰ります。: ライジング

著者 :
  • 新潮社 (2021年4月21日発売)
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感想 : 109
3

2作で終わるかと思っていたが、まさかの3作目。
ドラマ同様、種田とよりを戻したところから、今作は始まる。
刊行自体は少し間が空いているが、作品は前作からの続き。
よりを戻した種田は、結衣と一緒に住むためにマンションを購入。そのまま、結衣の誕生日に入籍…
と、とんとん拍子かと思いきや、いきなり仙台へ出張。2週間以上、新居にも帰れない日々が続いており、入籍も延び延びに。
そんな結衣も、入社以来定時で帰るワークモデルとして、取材を受ける一方で、社内に蔓延る「生活残業族」との闘いを強いられていた。
今作で取り上げているのは、生活のために残業しなければいけないほどの会社の不当評価の問題。
結衣は入社以来、定時を貫き、33歳で管理職になっても、年収は役職手当を入れても480万円。新入社員で入った結衣は、その評価が決して悪いものだと疑っていなかったところが凄い。
しかし、30代前後の家族を抱える男性には、残業代の有無は死活問題。その為にわざと仕事を遅らせて、残業する人が増えていく。
残業代を減らす為に残業ゼロを目指す会社と、生活の為に残業をしたい社員の間で板挟みになる結衣。
仙台に行ったまま、戻らない種田の代わりにマネージャーの仕事もこなしながら、何とか会社との交渉に臨むが失敗続き。
そして、最後に結衣がたどり着いた方法が、今ではめっきりニュースでも聞かなくなった「ストライキ」それもデジタルを使ったもので、ラストのこのシーンは頭の固い創業族に対する一矢を報いた形で、読んでいてスカッとした。
全社員の賃上げ交渉は成功したものの、仕掛け人である結衣は異動することに。
ここで報復人事をぶち込んでくるところも、この作品ならではなのかも。そんなに何もかもうまくいかない。
いつもそんな気分にさせられる。
でも、今時、ベース給に見込み残業代50時間含むとか言う求人がざらにあって、50時間までは働けよ、と言われているようで、まだやった分だけきちんと残業代が出るネットヒーローは健全な会社だと思うのは、私だけだろうか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: フツー
感想投稿日 : 2021年5月6日
読了日 : 2021年5月6日
本棚登録日 : 2021年4月29日

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