みるなのくら (日本傑作絵本シリーズ)

  • 福音館書店 (1989年3月25日発売)
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本棚登録 : 266
感想 : 38
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ある若者がうぐいすの声に誘われて山奥に迷い込みます。山奥の屋敷にたどり着くと、中にいたあねさまがもてなしてくれました。その屋敷には12の蔵があり、自由に開けてみてもよいが、12番目の蔵だけはけっして見ないでくれと言われます。あねさまの留守に若者が蔵を開けると、そこには四季折々の世界が広がっていました。次々、開けるうちとうとう12番目の蔵に来た若者は……。

うぐいすの宿、とか他の名前でも伝わっている昔話。12か月バージョン、春夏秋冬バージョン、蔵ではなく座敷の間を開けていくバージョンなど色々あると思いますが、その中で一番好きな絵本です。
月々の美しい景色が圧巻で若者と一緒に次々と蔵の戸を開けるようにページをめくってしまいます。歳時記としても楽しめます。

一番印象深いのは12番目の蔵の前に立つ若者の絵です。蔵の扉に手をかけてこちらを見ている若者の表情は、誰もいないか確認しようと後ろを見ているようでもあるし、読んでいる人に対して「見たな」と言っているようでもあります。こわい顔をしている。わるいことをする時の人間の顔です。
桃源郷のような世界から一転、一気に空気が凍りつくようで、こわいもの見たさなのか、大人になった今でも、この絵本を時々読みたくなります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2022年2月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2022年2月27日

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