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恐怖の正体-トラウマ・恐怖症からホラーまで (中公新書 2772)
- 春日武彦
- 中央公論新社 / 2023年9月21日発売
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人はなぜ蠢く虫や閉所や密集する群れなどの、直接、身に危険を及ぼさないものにまで恐怖を感じるのか。精神科医であり作家である著者が、さまざまな恐怖に焦点を当て、正体をさぐるもの。
まず、心理学や脳科学などから恐怖の理由を導き出すものではありません。他の方の感想にもあるように、著者の恐怖体験などをもとに、様々なタイプの恐怖についてまじまじと見つめていく、エッセイのような内容です。
著者が本書で述べているように、人によって何をなぜ怖いと思うのかが異なりすぎて、理由が「一概には言えない」ためエッセイのようなスタイルになっているのかな。
何か科学的に恐怖の正体を暴いてほしいと期待して手に取ると「ちょっと思ってたんと違う」となるかもしれません。(私はそう思った方)
一概に断じることができないほど「恐怖」は人それぞれ。自分が何を怖いと思うかに、自分の人間性の一部が表れていると思うと、怖いと思うものを改めてまじまじ見つめてみたいような、やっぱり怖いような……。
2024年1月5日
様々な国境を様々な角度から描いた絵本。世界を意識し始める歳になったら、より興味深く読むことができるかも。大人の方が、案外、色々と考えるきっかけになりそうです。6年間かけて描かれた絵本とあり、なるほど、どのページも見ごたえ読みごたえがありました。高学年向けのブックトークでも紹介してみたい。
川や山が国境線になっているところもあるし、何の境目も無く人が日常的に行き来しているところもあるし、高い壁やフェンスが聳え立っているところもある。関係性や歴史を物語る国境。身の回りを見れば良くも悪くもこの境目を越えて、様々なものが行き来して、時には弊害もあるけれど、暮らしを豊かにしていることを教えてくれます。そして、境目はあるけれど、共に地球と言う星の上で同じ時を過ごしていることも感じさせてくれて、いい本だな、と思いました。
印象的だったのは、難民の人たちをギッシリと詰め込んだ(人間に対して使いたくない表現ですが、そうとしか形容できないような過酷な状況だという事が伝わってきます)船がポツリと描かれたページ。命がけで国境を越えている人々が描かれています。波は高く、海も空も暗い色をしており、朝日に向かって進んでいるのか、夜を迎えようとしている所なのかもわかりません。願わくば朝日であって欲しいと思うような場面です。
2023年5月10日
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語学の天才まで1億光年
- 高野秀行
- 集英社インターナショナル / 2022年9月5日発売
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『辺境メシ』『謎の独立国家ソマリランド』の高野秀行さんの笑えて、しかも言語学についても知ってしまえる1冊。謎の生物を求めてアフリカに行ったり、アマゾンに行ったり、体当たりではちゃめちゃな人物の体験記。自分でやれない(それほどやってみたい感じではないのも……)ことのオンパレードで刺激的だった。
語学上達には「伝えたいこと、知りたいことがある」状況が一番いい、言語はアイデンティティ・ネイティブの話す言語はみんな美しい、それから、習得すれば習得するほど「言語はどれもなんて似ているのか」という結論が印象的。
2022年11月5日
2022年11月10日
図書館で借りたのですが、この本は買おうと思いました。
本が大好きなのに、そろそろ目が見えにくくなってきた王様は、2人の男に世界中から「本」の話を集めるように命じました。(この辺のヨシタケさんと又吉さんらしき2人の男のイラストにまずニヤッとしてしまう)
1年後に戻ってきた2人は一晩ずつ交互に、王様に収集した本の話をします。だから全ての冒頭は「その本は」から始まるのですが、こんなに多彩な本のアイデアが生み出せるなんて、さすが2人の男。
ヨシタケさんから「人間てなんかそういうとこあるよねー」と肩の力を抜いてもらったり、「本て最高だよね」という話を思いきり浴びたりしたかと思うと、又吉さんに笑わされたり泣かされたり。出勤前に読んで、うっかり2回くらい泣いた。
どの夜から読んでも大丈夫なので、王様の気分で時々2人の男の話を聞きたい。自分の家の本棚にぜひいてほしい本。
2022年9月6日
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総員玉砕せよ! 新装完全版 (講談社文庫)
- 水木しげる
- 講談社 / 2022年7月15日発売
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映画「ゲゲゲの謎」から
映画にもこの漫画のエピソードが、少し出てきます。
水木しげるさんの体験をもとに描かれた漫画。
最初に開いた時に、やけに登場人物の紹介が丁寧だなあ、たくさんいるなあと思いながら眺めていました。覚えきれ無さそうだし、読みながらおいおい覚えられるかな、と読み進める事にしました。覚える前に、戦争によって次々とかえらぬ人になっていき、最後まで読んだ頃、ようやくこの本のタイトルをきちんと理解した気がします。あんなにいたはずなのに。
2023年12月25日
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高峰譲吉文集 いかにして発明国民となるべきか (岩波文庫 青952-1)
- 鈴木 淳
- 岩波書店 / 2022年7月15日発売
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著者の高峰譲吉はタカジアスターゼやアドレナリンの結晶単離を成功させた実業家。海外でのお酒造りのエピソードではメンタルの鋼ぶりとピンチに動じない発明家ぶりが伺える。やっとうまくいきかけていた工場が、妬みによって放火されて灰になるとか……。よくそこから立ち上がったなと思う。生没年が1854-1922とあるように、活躍していた時代は明治・大正のよう。確かに言葉遣いは古めかしい。
一方、日本は模倣は得意だけど発明ができない国と国内外問わず言われている、発明力があると信じて官民共に発明の奨励をした方が良い、など、今の時代にも言えそうな事が書かれていて、興味深い。
興味深いといえば「大豆が滋養に富み、肉食せぬ国民に肉食と同じ滋養を供する」とあり「大豆は畑のお肉」というのはいつから言われているんだろう?と思った。越後のガスについても言及しており、どの辺に視察に来たのかな、というのもいつか調べてみたいところ。
2023年8月13日
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にほんの詩集 まど・みちお詩集
- まど・みちお
- 角川春樹事務所 / 2022年6月15日発売
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「ぞうさん」「一ねんせいに なったら」など子供の頃に歌ったことはあるけど、まど・みちおさんの詩をまじまじ鑑賞したことがないので、新しい詩集が出た機会に。
・「いい家」
家が建つと蚊は来るし、蜘蛛も住むようになるし、人間からするとお呼びでないのに。と思うもの。「みんな じぶんを 人間のかぞくだと思っているのだ」の一文に腹立たしさが引っ込む。腕の良い2本足の兄貴だと思われているのなら、冷遇もできない。
・「ぼくが ここに」
「いること」は何にも脅かされない。
・「どうして いつも」
一番古いものがいつも新しく現れる
2022年9月4日
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2ひきのカエル そのぼうきれ、どうすんだ?
- クリス・ウォーメル
- 徳間書店 / 2022年5月21日発売
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森の中の大きな池の睡蓮の上、2匹のかえるがいました。1ぴきは大事にぼうきれを抱えてる。なんでそんなものを抱えているのか?と、抱えていない方のカエルが聞きます。棒を抱えている方のカエルが言います。その理由はというと、いざ犬が来た時に、その棒で「バンバーン!ってやっちまう」ためです。
架空の敵に備えすぎるあまり、両手がずっとふさがったまま一生を過ごすという話かな?それとも備えあれば憂いなしという話かな?と探りさぐり読みました。
2匹のカエルのテンポよいやり取り、目まぐるしく変わる状況、生き生きした自然の描写、どれも面白かったです!
2023年5月17日
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稲川怪談 昭和・平成・令和 長編集
- 稲川淳二
- 講談社 / 2022年4月21日発売
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「はじめに」と「おわりに」を飛ばし読みすることもあるけど、この本では読んでよかったです。稲川淳二さんの怪談に対する姿勢がうかがえて、より好きになりました。
稲川さんの語りそのものの文章なので、彼の声で脳内再生されましたが、自分の脳内再生だとちょっとゆっくり再生になるな……と、変な発見も。読み手の読む速度に制限されたとしても、生々しいあの感じは損なわれないのが面白い。稲川さんの語りって、文字になってものすごく冷静に読むと「バッと行ってグアー---」みたいな「それ、どんな状態???」という文章があるのですが、口語そのままの勢いとリズムに乗って読むと、その時の風景をクッキリと思い浮かべられる(気がする)んですね。どんな話もそうでしょうが、特に怪談話というのは、語り手と読み手の両方によって完成するのでは、と感じました。
一つ、古典的な怪談も収録されているのですが、稲川淳二さんが語るとテンポよく、まるでその時代に、その場所にいたかのように生々しく話してくれるので、古臭さを感じませんでした。稲川淳二さん、すごい!
2022年7月31日
2022年7月1日
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イクサガミ 天 (講談社文庫)
- 今村翔吾
- 講談社 / 2022年2月15日発売
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細けぇこたあ良いんだよぉっ!って感じ(病の妻子を置いて遠くに行くタイプの人かなあ?)で、勢いにのってガッと読むエンタメ時代小説。帯にもあったけど、若い世代にもおススメできる時代小説でした。
るろうに剣心とあずみとBLEACHを履修してきたので、こういう感じねっ!承知した!と楽しみながら一気読みしました。メディア化してもビックリしない。響陣系のキャラに昔からワクワクさせられてきました。続巻でも活躍を見たいところ。愁二郎の格好良さが引き立つと思いつつも、双葉ちゃんが今の所、ピーチ姫ポジション(るろ剣で言ったら、映画の薫さん)だけど、この後はどうかなと続きが気になります。早く読みたい。
2022年12月25日
美しい表紙に惹かれて手にとりました。
おはなしもかわいらしくて、ハッピーエンドでホッとします。
甘い香りが漂ってきそうな素敵なケーキ屋さん、表情豊かで心優しい小さな陶器のミリー、暖かさそうなお部屋と遊び盛りな子どもたち。眺めているだけでも、冬休みのウキウキした気分を思い出させてくれます。
いつ読んでも、もちろん良いけれど、冬に(できれば1月に!)暖かいお部屋でゆっくりのんびり読めたら良いですね。さらにそこに暖かい紅茶とケーキも加われば、言うことなし。思わず表紙のベルのような表情になっちゃうかも。
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世界のアーティスト250人の部屋 人生と芸術が出会う場所
- サム・ルーベル
- 青幻舎 / 2021年11月17日発売
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さすがアーティストたちのお部屋だけあって、美しい。調度品の置き場所一つ一つにもこだわりを感じる(案外、本人たちは無造作に置いたのかもしれないし、そうだとしても美しい配置になってしまうのかもしれない)。
美術館や博物館、すごく宿泊代が高いホテルの如きお部屋が並ぶ。
美しいんだけど、これ、落ち着くのかな。いや、歴史に名を残すアーティストともなるともしかしたら、部屋に落ち着きなど求めていないのかもしれない。謎の彫刻と同居し、部屋の壁には皿を並べかけまくり、重々しい柄の壁紙に包まれてこそ、インスピレーションが沸くのだろうし、あるいは沸きまくってしまうインスピレーションがこういう形で表出しているのだろう。
などと、勝手に思いながら一軒一軒、堪能した。どの家にも暮らしてみたいと思えなかったが、もしかして私はアーティストに向いてないのか。そもそも普段から何か嗜んでいるわけでもないので、それもそうか。
たまにこの本のことを思い出して、開いてみて「おお、心の友よ」とか思えたら、アーティスト気質が1%くらいは芽生えているのかもしれない。
1泊してみたいな、と思うのは建築家さんのお部屋。
あと、作家さんのお部屋。本が多くて居心地良さそう。どんな本が並んでいるのかも気になるところ。
2023年9月18日
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同志少女よ、敵を撃て
- 逢坂冬馬
- 早川書房 / 2021年11月17日発売
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作中でもう戦争が終われば平和な時代が続くだろうと、登場人物が語っているのを何とも言えない気分で読んだ。
漫画化で話題の『戦争は女の顔をしていない』も登場、併せて読みたい。
狙撃兵を含め戦争に従事した人々は、戦場から生きて帰っても、その後の人生に深い影を落とされる。強い復讐心に生かされていたセラフィマが、イリーナや仲間や生き甲斐でなんとか人生を支えているようにも見え、現実の世界で戦争と関わらざるをえない人たちのことが頭をよぎる。
「お前は今、どこにいる?」が印象的なセリフ。大きな時代の流れの中で、自分のありようを見失わないことは難しい。
2022年9月23日
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最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―(新潮新書)
- アンデシュ・ハンセン
- 新潮社 / 2021年11月17日発売
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スマホ脳を読んだので、続いてこちらを。
子ども向けを意識して書かれたものです。
結論、「とにかく運動すると脳が鍛えられる」
2022年3月24日
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チョコレートタッチ (文研ブックランド)
- パトリック・スキーン・キャトリング
- 文研出版 / 2021年10月20日発売
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主人公はジョン・ミダス少年。ミダス。解説にあるように、ギリシャ神話に出てくる金が大好きなミダス王のお話がモチーフになっています。
最初は口に入れたものがなんでもチョコになることを喜ぶミダス少年でしたが、途中から喉が渇いてきて水が恋しくなります。今までは粗末にしてた果物や野菜などの“体に良いもの“ですら恋しくなってきます。やがてお母さんまでもチョコにしてしまい、心底、お母さんを元に戻してほしいと祈ります。
現代版のミダス王の物語か。と思ったら、書かれたのは70年前。今に至るまで世界中で読み継がれているそうです。言い回しなんかは、なるほど、確かに少し昔の海外児童文学という感じですが、お話の展開に惹かれて最後までするする読めました。
歯磨き粉や手袋など明らかに口に入れたら不味そうなものまでチョコ味だ!と言って喜びながら食べてしまうシーンは、かなり不気味でした。不思議なお店に不思議なアイテム。銭天堂好きには、そのあたりのキーワードを伝えたい。
どの章から読んでも良い、読む順番で印象が変わる本。N通りの表情を見せる小説。
なんて面白い試みだろう、本にこんな可能性があるんだ。
一つの町を舞台に、各章で波紋同士が一部重なるように登場人物が重なる。ある章では脇役だった人物が、ある章では主役になっていたり、他の章では明確に描かれていなかった事実が別の章で明かされたりと、繋がりあい、重なることで解像度が上がっていく。
読み方で結末が大きく変わるわけではないけれど、読後感はかなり左右されるのでは、と感じた。
読んだ順番
名のない毒液と花
↓
眠らない刑事と犬(ペット探偵のその後だから。以下読む順番は気分で選んだ)
↓
笑わない少女の死(ニュースペーパー先生、頑張って)
↓
飛べない雄蜂の嘘(笑わない少女とも消えない硝子ともリンクする)
↓
落ちない魔球と鳥(ペット探偵が追っていたヨウムって……。てか、ニシキモさん!ラストであれが見れてて良かったね)
↓
消えない硝子の星(笑わない少女を先に読んだから切ない)
割といい終わり方になったと思う。
2022年10月20日
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犯罪捜査の心理学: プロファイリングで犯人に迫る (DOJIN文庫)
- 越智啓太
- 化学同人 / 2021年9月29日発売
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プロファイリングの歴史的な発展の道筋、分析の仕方などについて書かれている。同じタイプの犯罪から特徴となる行動を項目化していき、他のどの項目と関連性があるのか(あるいは無いと考えられそうなのか)、起こった件数はどの程度なのか、などをマトリクス表に起こして空間マップに落とし込んでいるようす。
実際の事件を追うごとに、かつて言われていた説が「当てはまらないケース」も出てきて、今後も研究の余地がありと書かれている分野も。
安易に「このタイプはこうだ」と言い切らない姿勢が窺えて、ホッとする。別の本で、心理学者とは人の心は簡単に読めたりしないという事を最も理解している人だ、という趣旨の言葉が書かれていたことを思い出した。
2024年1月30日
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ばあばに えがおを とどけてあげる (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
- コーリン・アーヴェリス
- 評論社 / 2021年9月21日発売
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「いちばんわるいのは ばあばが わらわなくなったこと」と思えるファーンは、素敵な子。
ばあばがワーイ!となれるように公園にワーイを撮りに行こうとする。とれるの? と思うけれど、ばあばに持ち帰らないといけないから、かなあ。
よろこびについて「ひとのこころを しあわせにして めをかがやかせるものよ」と聞いて、すぐに○○みたい?と聞けるのは、普段から良い時間を過ごしているんだな、と伺わせる。
公園でワーイ!がある時の流れが①何かしらのワーイ!がある②ファーンが「ワァーイ!」と接して微笑むあるいは笑う③ワァーイ!と喜びが湧く(④持って帰れない)
→喜びを知り、喜びに気づいて、受け取れることで喜び・幸せが完成する。けれど、形があるわけではないので、持ち帰ることはできない。
自分のために一生懸命喜びを集めてくれようとしたファーンの存在が、おばあちゃんにとっては喜びそのもの。おばあちゃんもワァーイ!を受け取れるようになって、ホッとする最後。
大人も、喜びや幸せってなんだっけ?という気分の時に、ヒントになりそう。
読み聞かせだと「ワァーイ!」が難しい……。私も最近、ワァーイ!が足りてないのかも。探しにいくか……。
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medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)
- 相沢沙呼
- 講談社 / 2021年9月15日発売
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沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)
- 東野圭吾
- 文藝春秋 / 2021年9月1日発売
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映画が面白かったので。
早い段階で複数人による(参加者も明かされている)犯罪だと明かされるのだが、誰がどのパートを担ったのか考えたり、二転三転する話に引っ張られたりするうち、最後まで一気に読んだ。
本文でアガサクリスティが出てくるのは、オリエント急行が念頭にある、という感じだろうか。パレードも車両も連なる存在、過去と現在もまた連なっている。
「沈黙」の書かれ方が面白かった。利己的な「沈黙」、利他的な「沈黙」、生者の「沈黙」、死者の「沈黙」、沈黙が持つ強さ、証言という言葉に頼る心許なさ、あるいは言葉が持つ強さ。
映画だと役者さんが、様々な感情を載せて言葉を重ねていくので、より「沈黙」について印象深かったのかもしれない。
沈黙は真実を覆うほどの力を持つのか?と、物語の序盤でモヤモヤさせてくるが、それに対して湯川先生が言葉を交わし続けて事態を動かしていき、やがて沈黙が破れられる辺りが面白い。
今回の文庫本カバーの「容疑者Xはひとりじゃない。」というキャッチコピーも好き。「一人」ではないし「独り」でもない。だからこそこんな事件になった。
湯川先生が容疑者Xの献身について話すから思わず再読したくなった。それにしても湯川先生、アメリカに行ってずいぶん人間味が増しましたね……。
2022年9月23日