日本国憲法第9条が事実上空洞化しつつも、なぜ反憲法派が「明文改憲」に成功しないのか?という問題を考察しているが、フロイト精神医学の恣意的な準用による疑似科学的分析や、「徳川の平和」を現行憲法の「先行形態」として引き出す非歴史的思考は、とてもではないが説得力をもたない。「憲法の無意識」を捉えるならば、憲法と同様に「外的強制」され、ある意味9条以上に規範化している「日米安保の無意識」にもメスを入れる必要があろう(日米安保体制という前提がなければ憲法9条はとっくに改定されていたことは想像に難くない)。また、いくら講演草稿が元になっているとはいえ、「山県有朋が死ぬと《中略》美濃部達吉の『天皇機関説』が主流となった」「それが”大正デモクラシー”と呼ばれた時代です」(p.58)とか「日清戦争当時、米国は日本と手を結んでいました」(p.175)というような基本的な事実誤認がかなり多く、大雑把にもほどがある。
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カテゴリ:
評論・論説
- 感想投稿日 : 2017年3月29日
- 読了日 : 2017年3月29日
- 本棚登録日 : 2017年3月29日
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