聖徳太子――ほんとうの姿を求めて (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2017年4月21日発売)
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感想 : 11
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 東大国史出身の研究者が「不在」説を唱えるほど、21世紀の現在もとかく新説・異説・珍説の多い聖徳太子だが、本書は現在では最も伝統的・守旧的な立場からの聖徳太子小伝と言えよう。後世の偽作説の強い十七条憲法や、やはり後世の追刻説の強い法隆寺金堂釈迦三尊像光背銘を全面肯定、舶来説のある法華義疏も太子真筆説を採っている。さすがに「摂政」「皇太子」や蘇我馬子との共治説をそのままでは採らないが、馬子のアドバイザー・ブレーンという位置づけで事実上旧説を引き継いでいる。それだけに新鮮さは全くないが、いわゆる教科書的な通説がどのような研究史を経て形成されたか簡便に知る上では有用で、聖徳太子や太子信仰を学習する上での「出発点」としての価値はあろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評伝
感想投稿日 : 2018年5月10日
読了日 : 2018年5月10日
本棚登録日 : 2018年5月10日

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