最澄と空海(小学館文庫) (小学館文庫 う 7-3)

制作 : 梅原猛 
  • 小学館 (2005年5月11日発売)
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本棚登録 : 256
感想 : 19
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梅原氏が書かれた天台宗の本覚思想についての本や、空海の思想に関する本は別々に読んでいたのですが、本書は、最澄と空海を対比している本、ということでとても興味深く拝読しました。最澄と空海は平安時代に生きた日本仏教の二大巨頭で、この二人の交流関係自体もドラマになりそうな波乱の展開を見せます。

私自身、それぞれの教え(天台宗、真言宗)についての基礎知識はあったのですが、梅原氏の明快な解説で理解がさらに深まった気がします。そして本書の最大の特徴は、題名にもあるように両者の対比です。本書を通じて感じたのは、当たり前かもしれませんが、両者には共通点もあれば相違点もあること。共通点は、例えば山岳への想い(梅原氏によれば山にこもる動機は異なりますが、いずれにせよ山岳仏教を切り開いたこと)。これによって日本古来の神様と外来の仏教が融合し、山川草木悉皆成仏のような思想が生まれたことです。また何より二人の共通点は、衆生済度、つまりいかにしてより多くの人を救いたいかという強烈な想いではないでしょうか。空海という人は、まさに大日如来と合一された存在のようで、見方によっては非人間的(非感情的)な印象も受けるのですが、こと衆生済度については最澄と同じくらいの純粋で強烈な想いを抱いていた気がします。

他方、相違点はかなり多いといえるかもしれません。梅原氏は最澄を円(中心点が1つ)、空海を楕円(中心点が2つ)というメタファーで表現されていますが、これは面白かったですし納得できました。1200年も前の日本にかくも偉大な思想家が2人同時に存在していたこと、しかもその記録についても、豊富とは言えませんが十分残っていることは日本の凄さではないかと感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年5月2日
読了日 : 2018年12月6日
本棚登録日 : 2023年5月2日

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