本書は20世紀の哲学者アーレントの生涯と彼女の思想についてまとめたものになります。アーレントといえば「全体主義の起源」「人間の条件」などの著作が有名ですが、本書を通じて、彼女の原体験的なものの理解が深まり、思想の背景にあるものが何なのかなどとても考えさせられました。新書なのであっという間に読めるかと思っていましたが思いのほか時間がかかりました。その理由は2つあります。1つ目はアーレントの思想が独特に感じる箇所があって、理解に時間がかかる点。2つ目は、理解できた後に、「なんて深い洞察なんだろう」と感銘を受けて、自分自身の「思考」プロセスが開始されてしまうことです。この2つ目がすごく重要だと思うのですが、アーレントほど自身の思考プロセス、つまり自分と自分自身の間の対話のスイッチをオンにしてくれる人はいない気がします。そしてこれは彼女が望んでいることなのだと思います。思考すること、そしてその思考したことを自分の心の中に閉じ込めるのではなく、他者に投げかけることで「世界」とも関わることこそがアーレントの望んだ人間のあるべき姿だと思います。本書はアーレント初学者でも読めるように配慮されて書かれているとは思いますが、やはり最低1冊くらいは作品を読んでから、本書を通じてアーレントの人物像を学ぶとより得るものが多いのではないかと感じました。おすすめです。
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- 感想投稿日 : 2023年5月2日
- 読了日 : 2018年8月16日
- 本棚登録日 : 2023年5月2日
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