デジタル経済と税: AI時代の富をめぐる攻防

著者 :
  • 日経BPM(日本経済新聞出版本部) (2019年4月18日発売)
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感想 : 8
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税金は素人の身ながら、タイトルを見て面白そうだと思い本書購入しました。結論から言うと、初心者の人間にもわかりやすく解説されていると思います。またGAFAなどの大手デジタル・プラットフォーム企業が大規模な租税回避をしている、というのは新聞等で知ってはいましたが、改めて各社違うスキームを用いているというのがわかり勉強になりました。本書から学んだのは、経済のデジタル化は税制の在り方を根幹から覆そうとしているということです。音楽業界ではデジタル・ディスラプション(デジタルによる破壊的な影響)が起きていると言われていますが、税制の分野にもデジタル・ディスラプションの波が押し寄せているということです。

税に関して現状何が起こっているのか、についての分析編は大変勉強になったのですが、一点気になったのは、著者が描く未来像がかなり悲観的だということでしょうか。もちろん、そういう悲観的な未来像を描かない限り、ドラスティックな税制改革を提案する意味はないわけですが、恐ろしい未来像を国民に想像させたうえで税金のプレゼンスを今以上に高めようとしているかに見えて、あまり良い気がしませんでした。また本書の最後では、国がロボットに対する直接持ち分を持ち収入を得る、というシナリオも描かれていますが、それこそ「1984年」的なディストピア社会ではないかという気もしました。ただいずれにせよ、こういう議論を国民がしていくことが大事なんだ、というメッセージと受け取りましたので、本書は啓発的であったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年5月4日
読了日 : 2019年11月18日
本棚登録日 : 2023年5月4日

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