ハーバードでいちばん人気の国・日本 なぜ世界最高の知性はこの国に魅了されるのか (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所 (2016年1月15日発売)
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感想 : 61
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本書はハーバード大学(その中でも特にビジネススクール)で日本にまつわるケースがどう授業で取り上げられているか、そしてそれを通じて日本がどう見られているかを書いた本になります。基本はハーバード大学の先生へのインタビューが中心となっています。本書の論調は題名通り、かなり日本に対してポジティブに書かれていますが、その意味で本書の最大の目的は、「日本人よ、もっと自信を持ちなさい」ということを強調したいのだろうな、と思いました。日本悲観論が多すぎる中こういうメッセージを伝えたいという目的は理解できます。

 著者が達成したいであろうこの目的については私も同意できたものの、書いてある内容自体はかなり浅い記述に終始していて、かつ論理的に?と感じる箇所も多々あり、質的にはあまり感銘を受けませんでした。たとえば「日本の経営者は実はすごいんだ」といって、本書の中で列記している人物はすべて創業者(本田宗一郎など)。ある日本人教授が指摘しているように、日本は戦後の創業者時代は米国企業を打ち負かしていましたが、サラリーマン経営者時代に突入すると、今度は米国の創業者(ビルゲイツ、スティーブジョブズなど)に打ち負かされていると。つまり日本のサラリーマン経営者は、米国でもほとんど評価されていません。今後は、コマツの坂根さんや日立の川村さんなどが「中興の祖」として米国でも評価される可能性はありますが、創業者とサラリーマン経営者の区別という視点は本書にはありませんでした。
 また最後まで違和感を感じた点として、ハーバード・ビジネス・スクールで教鞭をとられている竹内教授に関連する記述がなかった点です。たしか竹内教授は日本発とも言える知識創造経営理論(野中郁次郎さんとの共著が有名ですよね)をHBSで教えられていると思うのですが、これこそ日本企業特有の経営理論を米国で啓蒙されているということで、これを受講している外国人学生がどう感じているか、も私としてはとても関心があったのですが、全く触れられていませんでした。あるいは全編通じて外国人教授に日本を語らせたい、という思いがあったのかもしれませんが、違和感は最後まで続きました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年4月27日
読了日 : 2016年2月27日
本棚登録日 : 2023年4月27日

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