世界の美しさや非情、運命の皮肉を示す11の短篇。少し前の時代の人々のしきたりや暮らしに神話や聖書の陰影が加えられていて、名画を眺めているような心地がする。牧師夫婦に引き取られた孤独な少女「アルクメーネ」や、子供のいない裕福な商人夫婦が利発な男の子を養子に迎える「夢を見る子」、旧家の末息子と結婚したしっかり者の商人の娘(「真珠」)の女たちが気になる。やや素朴な男たちに比べて女の真意は容易に理解しにくい。だが幸福になれるかどうか分からなくても、自分で生き方を決め、自分の足で立つ強靭さはインパクトがある。「少年水夫の話」の老婆のパンチが愉快。「ペーターとローサ」での、悲痛で美しいラストシーンに息をのんだ。(1942)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外短篇
- 感想投稿日 : 2019年3月7日
- 読了日 : 2019年3月6日
- 本棚登録日 : 2019年3月6日
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