20世紀前半に書かれた18篇を収録、英米作品が多い。19世紀編に見られた妖精や悪魔は影をひそめていて、かわりに、“頭に浮かんだすべての秘かな思い、狂った欲望、理不尽な激昂、彼の心が生んだ汚らわしい怪物たち”(A・マッケン「紙片」)とあるように、人間性の深淵に恐怖を見る作品が増える。魅惑的な女主人の招待で、荒れた海を越え島に渡ったものの肝心の女性は現れず、技術者を名乗る人物と過ごす羽目になるL・P・ハートリー「島」が非常に好み。ひどく不穏で、ソフィスティケートされた雰囲気が良い。そして、“この巻最大の目玉”というJ・メトカーフ「ブレナー提督の息子」だが、遅効性の毒をあおったような、強烈に厭な読後感が素晴らしかった。もちろん今回も充実した解説がついていて、読みたい作品、気になる作家が次々と増えてゆく。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
怪奇幻想
- 感想投稿日 : 2018年12月30日
- 読了日 : 2018年12月29日
- 本棚登録日 : 2018年12月30日
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